BOOK
□海と闇に愛される月
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「うわあぁっ!!」
突然空を切り裂いた爆発音に、心地好い眠りに就いていたローが飛び起きて辺りを見渡した。
明かり一つ点いていない大きな部屋は、窓の向こうに見える雷の光に青白く周囲を映し出している。
停電でもしたのだろう。
いつもはダウンライトが点いているはずの部屋は、時折に光って見せる雷が発する明かりを窓から取り入れているだけ。
暗闇の中でそれを見ていたローは、再び眠りに就こうとしてベッドに潜り込む。
「どうした?」
「やけに暗いな…」
同時に左右からかけられた声に、もしかしたら先程の自分の声で2人を起こしてしまったのかと思いながら、少し済まなそうにローは静かに答えた。
「雷、近くに落ちたみたい」
あれだけの音が響いたのだから、2人はとっくに気がついていたのかもしれないが。
そうなるとやはり無意識に出てしまった叫び声を聞かれてしまったのだろうという事実に恥ずかしくなり、ローは無防備な身体を柔らかなベッドの中で丸まらせた。
今になって降り始めた雨が窓を濡らしていく。
雨足が酷くなっていくのを耳で感じていると、背後から伸ばされた腕の中にローは捉えられた。
「え…ぁ…」
素肌に直接感じる腕の温もり。
いきなりの行動に驚いていると、今度は前方の男に唇を塞がれてローは肩を竦ませた。
「ん…っ…?」
暗闇の中で相手が誰なのか見分けがつかず、ローは軽く混乱していく。
視覚で感じ取れない分だけ、それ以上に肌が敏感になっているような気がした。
「んぅ…、ん、んー!」
触れていた唇の隙間から温かく濡れた舌が口内に入り込み、逃げようとしたローの舌を執拗に追ってきた。
後頭部に差し込まれた手で頭を抱え込まれてしまい、より深くなった口づけはローの呼吸までも奪っていく。
背後からローを抱きしめていた腕はそのまま震える胸へと移動していき、凡その場所を把握している男はそのまま彼の項へと唇を寄せてその場所を舌で舐めた。
首筋に触れたサラリとした髪に、その男が誰であるかを理解したローは、同時に口内を自由に動き回る男が誰なのかも理解した。
理解はするが、暗闇の中では2人の顔を確認することが出来ない。
苦しくなってきた呼吸に随分と近い距離にあった男の胸を押し返してやると、微かに漏れた笑い声と共に唇を解放してくれる。
「はっ、は、ぁ…、ドフィ…っ」
乱れてしまった呼吸の中でその名前を口にすると、ドフラミンゴはローの頭を引き寄せて額にキスを落とした。
「ぁ…、コラさん、待って…!」
項から移動して背筋を舐めていたコラソンが両方の胸の頂を指の腹で潰してくる感触に、ローはその動きを止めようとして同じように名前を呼ぶ。
それでなくとも目が覚める前までこの2人に抱かれていたローの身体は、暗闇で感覚が鋭くなった今では余計敏感になっている。
目の前にいるドフラミンゴの姿でさえローには確認することが出来ないのだから、後ろから自分を抱きしめているコラソンも、先程首筋に触れた髪の感触がなければ誰であるのか解らない状態。
そんな中で身体を自由にされたのであれば、どうなってしまうのか考えもつかないローは2人の男の間で身動いだ。
何も着けていない素肌のローは、胸と背中にドフラミンゴとコラソンの肌の温もりを感じ取る。
「ロー」
2人の声が見事に重なり、左右の耳にそれぞれ降り注いだ。
合わせたように耳に舌が這わされ、ローは一度ぎゅっと目を閉じる。
目を開けていても閉じていても変わらない暗闇は、自分の身に起こっていることが今本当に現実なのだろうかと錯覚させてしまう。
次から次へと与えられる刺激にローが制止の声を上げると、小さく笑った声が耳に響いた。
「お前が選んだんだろう?」
「おれたち2人がいいって」
柔らかな口調は責めることをしない。
確かに2人のことは好きだった。
憧れみたいなものだった。
自分にないものを持つ2人。
幼い頃から2人を追いかけていたローは、2人に迫られて、どちらも失いたくなかったが故に出した結論。
けれど、別に身体の関係を求めていた訳ではない。
それでも気づけばあれよあれよという間に女のように拓かれたローの身体は、2人の熱を覚えてしまって今では1人で眠ることさえ出来なくなっていた。
昔からコラソンのベッドによく忍んでいたが、今では違う意図をもってその中に忍んでいる。
目敏くそれを見つけたドフラミンゴは別の部屋を用意して、その部屋に大きなベッドを置いた。
そのベッドの上で毎晩のように交わされる痺れるような甘い熱。
相手が1人の時もあるが、今日のように2人の時も多い。
「ぁっ、あ、あぁ…」
触れられる箇所が気持ちよく、ローは身体をくねらせる。
誘うように突き出された胸は円を描くように指先で突起付近を撫でられ、それだけでは物足りないローは切なそうに甘い声を上げた。
コラソンの膝の上に座らされる形で抱き上げられたローは、不安定な体勢に手を伸ばしていつの間にか同じように座っていたドフラミンゴの腕を掴む。
「ぁ…もっと…、触って欲し…っ」
ローの理性などとっくに飛んでいる。
見えない相手に伝えると、一度頭や頬に触れた指が、ぷくりと熟れた胸の突起や既に勃っている中心部に伸ばされて、その刺激にローは全身を歓喜で震わせた。
「ロー。誰にどこを触られているんだ?」
暗闇の中で伝えられる声の主ですら解らなくなりはじめている。
「あっ、解んな…いっ…」
そんな状態のローに聞いたところで答えが返ってくるはずもない。
「クスッ。これなら解るだろう?」
その声と共にまた別の指で自身を撫でられ、ローの身体が跳ね上がる。
双方から撫で合わせるように擦られた自身に、その刺激にローの身体の震えが止まらない。
同じように触れたいつの間にか濡らされていた指も、慣らされた場所はほんの少しの異物感を覚えながら難なく飲み込んでいった。
「ぁぁ…気持ち、い…っ…」
ばらばらに前後される2本の指が、何度も感じる場所に触れてくる刺激に、ローは堪らず声を出す。
快感に素直な身体は、教えられた通りに言葉も素直にさせる。
両耳を甘噛みされながら舐められ、下肢はそれぞれの手で前と後ろに刺激を与えられて、閉じることの出来ないローの口からはずっと嬌声が漏れていた。
「んく…っ、それ、すご…い…っん…」
指が1本ずつ増やされて、ローの声が更に甘くなる。
どろどろに蕩けてしまった下肢からは、厭らしい水音が響いていた。
「ぁあっ、コラさん…、ドフィ…っ…」
感極まったローの声は2人の名前を甘く呼ぶ。
熱に浮かされた身体は汗を流しながら微かな痙攣を続け、閉じた目からは涙を溢れさせた。
「ぁ…っ、も…いきそ…っ」
腰に伝わる甘い痺れに、ドフラミンゴの腕をきつく掴まえながらローが身悶える。
「いけよ」
「ほら」
息と共に耳に伝えられる声。
追い上げるように動かされた2人の手に、ローが身体を強張らせた。
「んぁっ、ぁああ…っ!」
小刻みに震えながら2人の手の中でローが弾ける。
ぎゅうぎゅうと伸縮を繰り返して絞めつける中を宥めるように指の腹で撫でてやると、余韻に震えながらローが力の抜けた身体をドフラミンゴに預けていった。
荒い呼吸を吐くローの頭にキスを落とし、熱い中から揃って指を抜いてやると、微かな電子音の後で部屋の明かりが点いた。
焦点の合わない目で恍惚としたした表情を浮かべるローは、その身体を未だに痙攣させながら快感の余韻に浸っている。
汗で濡れた身体をまだ冷やさないように抱きしめたコラソンは、欲で濡れた手で自身に触れて潤滑油変わりにすると、ローの中にそれをゆっくりと埋めていった。
「ぁ…く…ぅっ、ん、ぁあ…」
ずぶずぶと身体の中に侵入してくる熱に、それを受け入れようとローが身体の力を抜こうとするが、過敏になっている今の身体ではなかなか上手くいかない。
「っあ…、ゃ…ぁぁっ…」
力の抜けない身体は余計にその大きさを感じてしまい、ローは支えきれない自分の身体をドフラミンゴに雪崩れさせた。
全てを埋め込んだコラソンを見たドフラミンゴは、ローの身体を抱き上げながら赤く濡れた唇に指をなぞらせる。
「ぁ…、はぁ…っ…」
上げられた顔の目の前に見えた、自分とは違う大きさを持つ自身に、ローは舌を這わせた後でそれを銜え込んだ。
朦朧として霞のかかった頭では誰に何をされているのか、明かりが点いた今でもローは解らなかった。
ただ、身体の奥に感じる熱や、口内を埋める熱が気持ちよくて、その感覚を逃さないように夢中で感じ取る。
「今日は随分と気持ちよさそうだな」
かけられる誰とは解らない声に、ローはこくこくと頷きながら溢れる唾液や体液を嚥下する。
質量のあるそれが、更に口内で大きくなった。
「んッ、んん…ぅ…」
浅く突かれていた動きが次第に大きくなり、ローの深い場所を貫く。
頭を固定されて口内で暴れはじめた熱に呼吸の苦しさを覚えるが、それでもローは何度も舌を絡めながらそれを絞り取ろうと吸いついた。
「う…んん、ん…っ」
勃ち上がった自身に再び手を添えられて、ローの身体が震え上がった。
思わず歯を立ててしまいそうになったのを堪え、ローが限界まで口を開いて呼吸を確保しようとする。
「…ぁ…、んむ…ぅ…」
くぐもった声と共に、口からは混ざり合った液体が流れ落ち、ローの顎を伝っていった。
ガクガクと身体を揺さぶられ、前や後ろ、口内に与えられる刺激に訳が解らなくなって、ローは促されるままに今日はもう何度目になるか覚えていない欲を解放させた。
薄れていく意識の中で、身体の中と口内に熱い迸りを感じたローは、それを飲み込むと目を閉じていく。
あれだけ激しく降っていた雨は、いつの間にか止んでいた。
完全に意識を飛ばして崩れ落ちたローの身体を拭いてやったコラソンは、疲れきって眠るその身体を優しくベッドに寝かせてやる。
何度か頭を撫でて寝顔を見ていると、自分の近くから聞こえた笑い声に、その主であるドフラミンゴを見た。
「昔からよく振り回してくれる」
独占欲の強いドフラミンゴでさえ、ローを自分だけのものにすることが出来ない。
それはきっと、自分自身にも言えることなのだろう。
どちらかを選べと言えば、自分を選んでくれる自信はあったが、それは一時的にしか過ぎない。
自分たち2人には流されやすいロー。
どちらかを選ぶことが出来ないのであれば、いっそ2人で自分たちだけのものにしてしまおうと、そう言ったのはどれくらい前の話だろう。
雲間から見えた月だけが、それを知っていた。
END