BOOKU


□スローライフ
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「明日は誕生日だろ? 明日は丸一日コラさんを好きにしていいぞ。何でも言うこと聞いてやるぜ」
 なーんて言ったからなのか、ローは眠れなくなってしまったようで、同じベッドに入っておれに抱きつきながら悩みに悩んでいるようだ。
 デジタル時計は10月5日の23時50分。
 ああ見えてもお子様体質なローは、普段なら22時を過ぎた頃には眠いと言って寝るような子だ。
 そのローがこの時間でもおめめパッチリなのだから、そんなに誕生日が待ち遠しいのか、はたまたおれの言葉がそんなに気になっているのかと思ってしまう。
「ほら。もう日付けが変わっちまう。寝ろよ」
「んー……。寝るのもったいねェ……」
 そう言うローの声は既に眠そうだ。
 身体は眠りを欲しているのに、心がそれを許してねェってところだろうか。
「誕生日もおれも逃げねェんだから。寝ようぜ」
 というか、ローがどんなお願いをしてくるのか気になる。
 それに、もったいないと言うくらいなのだから、コイツは24時間全てを使っておれにお願いをするつもりなのだろうかとすら思える。
 もちろん、可愛いローのお願いなら大歓迎なのだけれど、普段ですら眠りの浅いローを無理して起こしておくのは、大変よろしくない。
「誕生日おめでとう、ロー。愛してるぜ」
 日付けが変わると同時に言いながら、額にキスをひとつ。
「ん。おれも……。コラさん。ちゃんとキスして、ぎゅってしといてくれ……」
 ローは目を閉じておれのキスを受ける。
 初めのお願いがキスだなんて可愛らしいもんだ。
 ただ残念なのは、触れるだけのキスにしておかねェと、お互いに辛くなるというところだろう。
「うん。おやすみ」
 抱きしめて背中をぽんぽんと撫でてやれば、昔からの癖のようなもので、ローはすぐに眠りに堕ちた。
 翌朝の起床は普段よりやや遅めの8時過ぎ。
「おはよう、ロー」
 そう言って寝癖を整えてやり、頬にキス。
 まだ寝惚けているローに朝飯は何が食べたいと聞けば、鮭と厚焼き玉子と味噌汁がいいと返ってくる。
 誕生日であっても続けられるいつも通りに、おれはクスッと笑いながら、ローの為に朝飯を準備してやるのだった。



―・―・―・―・―



「出かけたりしなくてもいいのか? デートとか」
 食後、ソファでおれの腕に懐きながら本を読んでいるローは、本当に普段と変わりなくいつも通りだ。
 反対側の手を伸ばして髪を撫でてやれば、頭を懐かせたローがこのままでいいと言う。
「でもさ、折角の誕生日なんだし。普段と違ってお祝いとか、そんなのなくていいのか?」
 今日は丸一日をローの為に空けている。
 だから何でもしてやれるんだ。
 本を読むローの目がおれを見つめ、ローの目の中のおれが優しそうな顔で笑っている。
「だから、だ。二人きりでいると、コラさんはおれだけしか見ねェし、おれもコラさんだけしか見ねェ。それに誰もコラさんやおれを見ねェってのは嬉しい」
 きっと今のおれの目に映るローも、おれが見ているローと同じで嬉しそうに笑っている。
 そういう考え方もあるんだなーと思う反面、欲のねェ恋人にたいした祝い方も出来ずに、おれは申し訳ないような気になってしまった。
 そして更にローが愛しくて堪らない感情が湧き起こってくるのだから、おれはローを抱きしめると昨夜出来なかった甘いキスを何度も繰り返す。
「ん、っ、ふ……」
 舌を絡めればローの吐息が甘くなり、啜って舐めればローの顔が蕩けていく。
 その間にもおれの手は忙しなくローの身体をまさぐって、邪魔だというようにシャツもズボンも脱がせていくのだから、今更あとには引けないなと思いつつも、誕生日がこんな日でいいのかと一応聞くだけ聞いてみる。
「抵抗しねェなら、このままおれの好きに食っちまうけど」
 今日はローの誕生日だからローの好きにしていいし、何でも言うことを聞いてやるだなんて、一体どの口が言ったんだろうな。
「全部残さずに食えよ、コラさん」
 ニッと笑うローがおれの頭を引き寄せて、挑発するように唇に噛みついてくる。
 申し訳なさなんか忘れたおれは、遠慮なく下着も靴下も全て剥いでやり、滑らかな肌を唇でなぞった。
 一部を除いて全身を唇で触れたおれは、切ない息を洩らしながら声を抑えるローの手を取る。
「声、聞かせろよ」
 指の一本一本を丁寧に舐めて吸ってやれば、微かに声を上げたローがふるふると震えていた。
「ここ、もうこんなに濡れてる」
「あっ、い、言うな……」
 そう言って屹立して涙を流す場所を撫で、忍ばせた指で濡れた蕾を撫でる。
 つぷりと指を埋め込めば、一瞬硬く閉じた蕾がヒクヒクと蠢いておれの指を更に奥まで飲み込もうとした。
「欲しい? それとも、指だけでイきたい?」
 週に二度はローを抱いているもんだから、昔と違って今ではさほど慣らさなくても、ローは痛みを感じずにおれを受け入れることが出来る。
 挿れていた指を抜いて擽るように蕾を撫でれば、身震いしたローが懇願するようにおれの腕を掴んだ。
「早く……っ、コラさんが欲しい……」
 目を潤ませたローが掠れた声でおねだりしてくる様子は、おれにとって破壊的な可愛らしさだ。
 ズボンの中で早く出せと訴えていた男性器を出し、乱暴に下着ごと脱ぎ去ってソファの下に捨てる。
 ローはたどたどしい手つきでおれのシャツのボタンを外していて、全てを外し終えると同じように脱がせてソファの下に捨てた。
 触れ合う素肌同士はとても熱く、合わさっているだけでも心地好さを感じることが出来る。
 きつく抱き合えば互いの心音が伝わってきて、いつもより緊張したような速い鼓動に、おれとローは目を合わせて笑い合った。
「ロー……」
 優しいキスを落として、猛った熱をローの胎内に挿れていけば、ヒッと息を飲んだローがおれにしがみついてきた。
 どうにも挿入の瞬間だけは慣れないみたいで、逸る気を抑えながらローの中がおれに馴染むようにゆっくりと進み、根元まで挿れるとその場で暫く止まってやる。
「コラさん……、動いてくれ……」
 その時間はほんの数秒、十数秒の時間だ。
「動くぞ」
 ローの了承を得たおれは、はじめはなるべくゆっくりと、徐々にスピードを速めながら、時折角度を変えてローのイイ場所を突いてやる。
「ンッ、あ、は、あぁ」
 吐息は嬌声に変わり、ローもローでおれの腰に脚を絡めて動き始める。
「ロー、どうされたい? 速く? それとも、ゆっくり?」
 甘い声で喘ぎながら腰を振るローの動きは、いつもに比べれば幾分かゆっくりとしたものだ。
「ん、今日は、長く楽しみたいっ。ずっとコラさんと、こうしていたい」
 緩やかな抽送の中で何度もキスを交わし、溶け合うように舌を絡める。
 激しいセックスもするし、今日みたいにスローセックスを楽しむ日もあるが、今のローの気分はまったりと抱き合いたいのだろう。
 もしかしたら、夜まで身体を繋げたままなのかもしれない。
「イきたくなったら言えよ」
「コラさんもな。あっ、あ、いっぱい出していいんだぜ」
 汗を浮かべたローは幸せそうに笑いながら言うけれど、何度もイッてたら長く続けられねェのはお互い様だ。
 それでも最終的に先にへばるのはローだということだけは確信しているし、いつだって主導権を握らせてくれているのも実感している。
 流石に誕生日だから、泣かせることはしないけれど。
「なあ、本当に誕生日プレゼント、こんなのでいいのかよ」
 緩やかな動きの中で、徐々に快感の波が広がっていく。
 互いに息を上げながら、汗までも分け合って濡れていく様子をどこか他人事のように思いながら、おれは何度もローにキスをした。
「おれは、コラさんを独り占め出来て、幸せ……っあああ、お、大きくすんなって……ぁっ」
「無理……っ。お前が可愛すぎるのが悪い!」
 腹にローの熱を感じたが、気づかない振りをして動きは止めない。
「あ、あっ、たんじょ、びっ、コラさんに祝って貰えて嬉しいし、これからも、ずっと離れないでいてくれたら……」
 それは変わらない毎日であっても、とても幸せなことだと言ってみせたローに、おれは堪らずにローを掻き抱いて熱い欲を腹の奥にぶちまける。
 一度だけ動きを止めて無言のままで抱き合い、じゃれるようなキスを交わす。
 繋がったままの場所はまだ足りないというように疼きだしてきて、緩く抽送を再開させればローがおれを見て楽しそうに笑った。
「今日が終わるまでずっと、コラさんとこうしていたい気分だ」
「クスッ。ローがそう思ってくれるなら、コラさん頑張っちゃうぞ」
 明るかった空は次第に夕焼けに変わり、月や星が見えはじめる。
 流石に何度か休憩を入れたものの、夜になってもおれとローは身体を繋げていた。
「なあ、コラさん」
「ん?」
 10月6日という日が終わるまで、あと20分ほど。
 我ながら、というかローも、よく頑張ったと思う。
 ソファからベッドに移動しても抱き合っていたら、ローがおれの名を呼んで抱きついてきた。
「激しくして……」
 そう言って噛みつくようなキスをひとつ。
「ああ。じゃあ、そのままお休み」
 いつもより夜更かししていたローは、多分きっと凄く眠いのだろう。
 もう終わりと言わないローを労わるようにキスをしながら、腰使いを荒くしたおれはローの男性器に指を絡めて追いつめてやる。
 腕の中で眠ったローに優しいキスをもう一度。
「ハッピーバースデー、ロー。愛してるぜ」





END


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