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□恋を愛に変えようか
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 何が欲しいとか、どうして欲しいとか。

 それは本人に聞いてみればいい事なのだけれども、今回はそうもいかない。

 7月15日、今日は大好きな人の誕生日な訳で。

 1ヶ月以上も前から色々と計画を立てていたローだが、いざ当日となれば心臓がばくばくと音を鳴らして緊張していた。

 去年や一昨年は普通にプレゼントを渡して、手作り料理で盛り上がっていたはず。

 それなのに今年はどうしてここまで緊張しているのか。

 それは、恋人同士になって初めて迎えるコラソンの誕生日だからであった。

 ケーキは去年以上に上手く焼けた。

 料理も準備万端だ。

 後はコラソンが仕事から帰ってくるのを待つだけである。

 今年はどのタイミングでプレゼントを渡そうか。

 テーブルのセッティングを終えると、タイミングを見計らったようにコラソンが帰ってくる。

 ローは慌ててポケットの中にプレゼントを隠し、コラソンを迎えにいった。



「コラさん、お帰り」



 ローが迎えるとコラソンは破顔し、その細い身体を力いっぱい抱きしめてキスを繰り返す。



「ただいま、ロー! 待たせたな!」



 見つめられる視線に、ローの鼓動が高鳴る。

 大きな手を引きながらテーブルまで連れていくと、そこでまたローはコラソンに抱きしめられた。



「何だよ、ロー。おれの好きなものばっかじゃねェか」



「…誕生日だから」



 痛いくらいの抱擁は、コラソンが体重をかけたことでローがよろけてしまい、そこで終わりになった。

 テーブルに並べられた料理を次から次に食べるコラソンに、ローは静かに笑う。

 他愛もない会話をしているが、ローはどの時点でプレゼントを渡そうか悩んでいる為、あまり聞いていない。

 その間にも料理は全てなくなってしまい、ローは冷蔵庫から手作りケーキとワインを取り出した。

 ケーキはスポンジの間に様々なフルーツをカスタードクリームで包み込んである。

 その周囲を生クリームで覆い、上部の縁を苺で飾った。

 真ん中はチョコレートで、コラソンを祝う文字がローの手で書かれてある。



「お前、器用だよな」



「コラさんが不器用なだけだろ?」



 ケーキに蝋燭を差し、火を灯して部屋の明かりを消す。

 吹き消す瞬間、コラソンの笑顔がローには一瞬だけ泣き出しそうに見えた。



「コラさん、ハッピーバースデー」



 真っ暗な部屋の中でローの声が響く。

 部屋の明かりをつけると、コラソンは泣いていた。



「なっ!? なに泣いてんだよっ!」



 ローが椅子から立って慌ててコラソンの前に行くと、泣き顔を笑顔に変えながら力強く抱きしめてくる。



「…コラさん?」



 ローを抱きしめるコラソンの腕は震えている。



「だって…、だってよお。おれ、めちゃくちゃ嬉しくて…」



 ぼろぼろに泣きながら、それでも笑顔で色んな想いをローに伝えるコラソン。

 いつも傍に居てくれてありがとう。

 生まれてきてくれてありがとう。

 これからもずっと共に生きたいと、コラソンの願いはローと同じものだった。



「歳とると、涙脆くなるんだな、コラさん」



「うるせェよ…」



 コラソンの流す涙を指の腹で拭ってやり、ローが笑う。

 このタイミングでプレゼントを渡してしまおうか。

 ローはポケットの中から綺麗に包装されたプレゼントを取り出す。



「これ、誕生日プレゼント」



 黒い包装紙に深紅のリボン。

 ゴールドのシールには[Happy Birthday]の文字。


「開けていいか?」



「ああ…」



 リボンをほどき、包装紙を破らないように取り去る。

 黒い箱を開けると、それは部屋の明かりに反射してキラキラと光った。

 1ヶ月前から注文していたそれは、コラソンとローの名前が彫られた腕時計だった。

 コラソンは腕時計を取り、自分の腕に着ける。



「ロー…、ありがとうな!」



 そしてキスをもうひとつ。

 優しいキスが終わると、コラソンはリボンを手にして、ローにニコリと笑った。



「な、何?」



 コラソンはリボンをローの首に巻き、喉の前で結ぶ。



「誕生日プレゼント、お前自身もくれるんだろ?」



「え…」



 身体を引き寄せられ、ローはコラソンの腕の中に閉じ込められた。



「ロー…。俺にお前を愛させてくれよ」



 耳許で囁かれる声に、ローの心臓が音を立てて跳ね上がる。



「コラ…さん…?」



 今日という日が終わるまで数時間。

 さて、どうしようか。















END

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