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□お菓子と悪戯と
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「トリック オア トリート? フッフッフッ」
「お前もか、ドフラミンゴ。今日は皆、揃いも揃って煩く鳥だの食うだの」
「───は?」
今日はハロウィン。
長い廊下を何処かに向かって歩くローを見つけ、ドフラミンゴは彼に冒頭の言葉を投げたのだが、返ってきたのは意味の解らない言葉だった。
「ロー、まさかハロウィンを知らないとか言わないよな?」
「バカにするな。それくらい知っている」
フンッと、背も歳もドフラミンゴよりは遥か下なのに、それでも見下されているように感じてしまうのは何故だろう。
それでもローから感じる気配は不機嫌ではなく、何処か楽しそうに思えた。
「じゃあ、鳥とか食うとかって何だ?」
「テメェが「鳥食おう鳥」って言ったんだろうが」
ああ、なるほど。
これで意味が解った。
「聞き間違えだ…。トリック オア トリート、だ」
今度は間違えないようにゆっくりと伝えてやる。
「それはテメェの発音が悪い。「Trick and Treat」だろ?」
ニヤリと、挑発するようにローの色づいた唇が笑みを浮かべる。
「フッフッフッ。相変わらず口が悪い。まあいい、菓子はやる」
そう言ってドフラミンゴは昔からローが気に入っている菓子をプレゼントしてやった。
それはなかなか手に入らないものだったが、それでも今日、ローだけの為に必死で手に入れたものだ。
「フッ。じゃあ変わりに菓子をやる。おれのお手製だ、ドフラミンゴ。残さず食えよ?」
「───お手製?」
「ああ、この日の為に作った」
ローの目が細められ、口許は更なる笑みが加わる。
残すはずなどないだろう。
彼が自分で菓子を作って用意しているだなんて思いもしなかった。
貰えなかったら貰えなかったで、色んな悪戯をしてローで遊ぼうと思っていたドフラミンゴ。
目の前に出されるパイを受け取り、甘く漂う香りを楽しんだ。
「それはパンプキンパイだ」
「ほう?」
「残さずに味わって食えよ?」
当たり前だろう。
そんなもったいないこと、誰がするか。
ドフラミンゴはローから受け取ったパンプキンパイを食べた。
「───ッ…!!!?」
同時に感じる違和感。
身体の熱が顔に集中するのが感じられた。
「パンプキンパイ───。まぁ、中身は全てマスタードだけどな?」
ニヤリと、楽しそうにドフラミンゴの様子を窺うロー。
「Trick and Treat。誰もorなんてはじめから言っちゃいないぜ?」
ククッと、ローが笑う。
「───ッアアアァー…!!」
「全員脱落。これで邪魔はいなくなったか」
廊下を走って姿を消したドフラミンゴに、ローは一人で楽しそうに笑っていた。
踵を返し、ローはお目当ての部屋へと入っていった。
「コラさん、邪魔者は片付けてきた!」
だから今日は二人きりで過ごせると、ローは出迎えてくれたコラソンに抱きつく。
抱きしめ返してくれるコラソンの温もりが好きだ。
一度懐くように身体を擦り寄せた後、ローはコラソンに口を開く。
「Trick or Treat?」
「クスッ。両方だ」
「…え?」
お前からなら何をされても嬉しいと、コラソンはローを抱きしめて赤く染まった唇にキスを落とした。
END