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□クリスマスの夜のおはなし
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 前の日の夜はなかなか寝つくことが出来なかった。

 サンタクロースなんているはずがないと、そう言ったローに、サンタクロースは絶対にいると言い切ったベビー5たち。

 だって自分は知ってしまったのだ。

 何となく気配を感じて目を覚ますと、部屋に現れた両親が枕元にプレゼントを置いていったのを。

 そのことは黙っていたが、常識的に考えれば、世界中の子供たちにサンタクロースが1人でクリスマスプレゼントを配りきることが出来るはずもない。

 ファミリーに入ってから初めて迎えるクリスマス。

 サンタクロースが誰であれ、今年はもう何も起こることはないだろう。

 寝つけないことにイライラして何度も寝返りをうっていると、部屋の扉が開かれたことに気がついた。



「…誰っ!?」



 暗い部屋の中では侵入してきた人物が誰か解らない。

 ローが声を上げると、その人物はあろうことか自分の眠るベッドの中に入ってきた。



「ガキはとっくに寝ている時間だぞ?」



 聞き覚えのある声と、微かに香る煙草の匂いにローは警戒を解く。



「コラさん、なに? 夜這い?」



「ブッ!! バカッ! ちげェよっ!」



 ガキが何てこと言いやがると、コラソンはローの頭に軽く拳骨を落とし、小さな身体を抱きしめた。

 もぞもぞと動いていたローだが、コラソンの温もりは心地好く、擦り寄るようにして彼に身体を懐かせる。



「ロー。早く寝ないと、サンタは来ないぞ?」



 クスッと笑ったコラソンに、ローは夕食時の遣り取りを思い出した。



「どうせ、サンタクロースなんかいねェし…」



 それに、今までサンタクロース代わりだった両親ももういない。

 コラソンの服をぎゅっと掴み、胸に顔を埋めると、ローの頭がポンポンと優しく撫でられた。



「じゃあ、おれがサンタになってやるから、欲しいもの言ってみな?」



 流石に出来ることと出来ないことはあるが、子供の欲しがるものなど用意することは簡単だろうと、コラソンは口にする。

 身寄りがいないローにプレゼントを与える者がいないことは、ファミリーでは誰もが知っていた。

 元より、ファミリーにいる子供たちには身寄りがいない者が多い。

 だから自分たち大人は、毎年イベント事に関しては盛大に祝うことに決めていた。

 勿論、今年のクリスマスも既に準備が整っている。

 けれど何故か胸騒ぎが起こったコラソンは、ローの部屋へと足を運んだ。

 何となく、いつも以上にローが寂しがっている気がしたから。

 案の定、抱きついてくるローに、コラソンは笑いながら彼を抱きしめて何度も頭を撫でてやる。



「欲しいもの、なんでもいいのか?」



「クスッ。お前が本当に望むものならな」



 見上げるローの顔はこちらの出方を窺っているように見え、その不安を取り除くようにコラソンは笑いながら彼の頭を撫で回してやった。



「じゃあ、コラさん。おれ、コラさんが欲しい」



「───は…?」



 何を言われたのか理解出来ないコラソンが、間の抜けた声を出す。



「コラさんが欲しいって言ったの!」



「は…はァ?」



 再度同じ言葉を伝えられるが、やはりコラソンにはローの言うことが理解出来ないでいた。

 どうしたものかと頭を掻くと、真剣な眼差しのローがコラソンを見つめてくる。



「おれの傍からいなくならないでよ。ずっと一緒にいたい」



「あー…、そういう意味ね…」



 何だか凄いプレゼントをねだられたような気がする。

 明日や明後日が確実にあると約束は出来ない自分たち。

 それでもローが願うのなら、自分がプレゼントになってやるのもいいかと、コラソンは静かに笑った。



「じゃあ、ロー。おれをお前にやるから、ローもおれにくれよ?」



 ニッと笑ってみせると、一瞬キョトンとした表情を浮かべたローが嬉しそうに微笑んだ。



「コラさん、大人のくせにプレゼント欲しいとかズリィよ」



「そっ、それは関係ないだろうっ!?」



 腕の中で楽しそうに笑う愛しい温もりに、コラソンはローの額にキスを落として彼を包み込む。



「ほら、もう寝るぞ。朝からパーティーをすると皆騒いでいたからな」



 ちゃんと寝ておかないと最後までもたないと、コラソンはローにそう告げて目を閉じた。



「ん。おやすみ、コラさん」



 告げられる声と共に唇に触れた、ローの温かく柔らかい唇。

 驚いてコラソンが目を開けると、眠りに堕ちはじめているローの姿が目に入る。



「クソガキ…っ…」



 自分は眠ることが出来るだろうか。

 コラソンはローを抱きしめながら、もう一度目を閉じた。















END

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