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□用法を守ってご利用ください
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「ロー。好きだ好きだ、愛してる」



 耳許でずっと囁かれる愛の言葉。



「んぅーっ…」



 それを頭のどこかで聞きながら、ローは逃れるように身体を丸めて、より深くベッドの中に潜り込んだ。



「おはよう、ロー」



「…おはよ、コラさん」



 まだよく開いていない目をしながら、ふらふらと歩いて部屋に姿を現したロー。

 いつもより遅い起床にコラソンがローを見つめ、目を擦りながらぼーっと立っている彼の目の下に眉を顰めた。



「日に日に隈が酷くなっていってねェか?」



 眠れないのか? と、そう問いながら自身の座るソファの隣をポンポンと叩いてやると、それに気づいたローがコラソンの隣に座ってそのまま抱きついた。



「最近…、夢見が悪い…」



 普段から寝つきは悪いし、浅い眠りを繰り返しているロー。

 それでもここ数日の眠りの浅さに、そろそろ身体が限界を訴えはじめていた。

 眠れるものなら眠りたいが、眠りに堕ちはじめると決まって夢に魘されるのだ。

 その夢の内容など覚えてはいないが、決して良いとはいえない夢。

 ローは横からコラソンに抱きついたまま、その肩に頭を埋める。



「ロー…」



「これがいい」



 懐くローを少し離そうとすると、離されまいと腕の拘束を強くしてくる。



「そんな体勢じゃ、寝にくいだろ?」



「これがいい」



 だから暫くこうしていてくれと、頭を肩にぐりぐりと押しつけるローに、コラソンは軽々と彼を抱き上げて膝の間に座らせてやった。

 自分を枕にして眠れるのなら別にそれでも構わない。

 苦しそうな体勢から落ち着きやすい体勢に変えてやったコラソンは、ローを背中から抱きしめて彼の身体を自分に凭れさせてやる。

 背中に感じる温かい抱擁に、ふうっと溜め息を漏らしたローがそのままコラソンの胸に頭を懐かせた。



「まるで大きなガキだな…」



 懐かしい記憶に笑みを浮かべたコラソンが、ローの頭にキスを落とす。



「コラさんに甘えられるんなら、おれはガキにでもなんでもなるよ…」



 腹に回されるコラソンの腕に自分の手を重ねてローが笑う。

 ローの寝つきの悪さは昔からだ。

 なかなか眠らないローを膝に乗せて抱きしめ、何度も撫でたり慈しむようにキスを落としていたのも懐かしい思い出。

 そういえばと、思い出したフレーズを口に出してみるコラソン。



「おやすみなさい、いとしいひと。いまはめをとじて、おれのうでのなかで…」



 紡ぎ出される静かなメロディーに、ローは瞬きを繰り返した後、コラソンを見上げた。



「コラさん、それ…」



 忘れかけていた幼い頃の記憶が甦る。

 寝つけずによくぐずっていた自分を膝に乗せながらこの歌を歌っていてくれた人物が誰なのか、ローは今になって思い出した。



「なかなか眠らねェまだガキの頃のお前に、昔よく歌ってやったもんだ」



 ニッと唇に弧を描いて笑うコラソンに、ローも同じように笑みを浮かべた。

 ああ、この人は昔からいつだって変わらずに優しい温もりを与えていてくれたのだと、ローは腕に添えていた手をコラソンの頭に回して引き寄せた。



「コラさん、キスしてくれよ」



「なんでそうなるんだ?」



 間近に見えるのは、あれから随分と育ってしまった大きな子供。

 まだ少しだけあどけなさを残してはいるが、それでも大きくなったもんだ。

 そんなローが自分にキスをねだってくるものだから、コラソンは動けずにただじっと彼の顔を見つめていた。



「おやすみのキス、おれに教えたの、コラさんだろ?」



 そう言って楽しそうに笑うロー。

 かなりローを溺愛していた昔の自分は、確かにそんなことを幼かった彼に教えて、唇に触れるだけのキスを眠る前にしていた。



「昔のお前はまだガキだったからな…」



 今でも溺愛しているのは確かだが、それでも成長したローとキスをするのは意味が違ってくる。

 もう何年も触れていない唇を親指で撫でてやると、ローがそれをペロッと舐めた。



「おれは、コラさんの前ではガキでもなんでもいいから」



 だから早くキスをしろと、そう言って見つめてくるローの目を手のひらで隠しながら、コラソンは触れるだけのキスを小さく落としてやった。



「おやすみなさい、いとしいひと。ゆっくりおやすみ、おれのうでのなかで…」



 心地好い温もりと、耳に届く懐かしいメロディーに、ローはコラソンに凭れながらうとうととしはじめる。

 抱きしめられながら眠るのは久々で、ローは襲ってきた眠気に素直に身を委ねようとした。



「ローっ!!!! お前ら2人っ、何やってんだっ!!」



「…うるせェ」



 このまま眠りに堕ちるはずだった意識は、上げられる声に覚醒をはじめる。



「静かにしろドフィ。ローが起きちまっただろ」



 もうすぐで寝るはずだったローが腕の中で動き出したことで、コラソンは彼の眠りが妨げられたことに舌打ちする。



「コラソン、お前ローになにしてっ。ロー、おれのとこに来い! 眠れないならおれが寝かしつけてやる」



 ドフラミンゴは構わずに声を上げ、2人が座るソファに近づいてローの頬に指を滑らせた。



「あれだけじゃ足りないのなら、起きている時もずっと愛を囁いてやるぞ?」



 その言葉に、コラソンの眉がピクリと動く。



「悪夢の原因はお前か、ドフラミンゴっ!!」



 叫ぶローに、全てを理解したコラソンは溜め息を吐いた。

 ローの不眠の原因は全てドフラミンゴにあるのだろう。

 それでなくとも眠りの浅いロー。

 毎晩耳許で色々と言われ続けていたのなら、そりゃ悪夢に魘されるのも仕方がない。

 慰めるようにローの頭を撫でてやると、何かを思いついた彼がコラソンを見上げながらドフラミンゴを指差した。



「コラさん、ドフラミンゴを黙らせてくれ!」



「お安いご用だ、ロー」



「は? なに言って………」



 伸ばして触れたコラソンの手がドフラミンゴの肩に置かれると、静寂が二人を包み込んでくれた。















END

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