BOOKU


□赤ずきんちゃんSOS
1ページ/1ページ

「ぎゃーっ! テメェ。何しやがるっ!!」
「フッフッフ。今日はハロウィンなんだ。たまにはこんなコスプレもいじゃねェか」
「ふっざけんな!」
 ローはドフラミンゴの能力で、着ていた服をエプロン&スカート姿に。
 オマケに赤ずきんまでつけられてしまって、ドフラミンゴにギャンギャンと噛みついています。
 暴れるローの頭を押さえつけて笑っているドフラミンゴですが、その服は至って普通の服でした。
「何でおれだけ……」
 脱ごうにも脱げない服に、ローはしょんぼりとして諦め、近くの椅子にドカリと腰を下ろします。
「お前、スカートなんだから脚開いて座ると見えるぞ」
「――だったら、とっとと元に戻しやがれ」
 ローはテーブルに顎を乗せてドフラミンゴを睨みますが、ドフラミンゴはニヤニヤと笑うだけです。
「それよりも、使いを頼む」
 そう言ってドフラミンゴは、手提げ籠をテーブルの上に置きました。
 籠の中身はぶどう酒とケーキです。
「ババアが病気になっちまってな。見舞いにこのぶどう酒とケーキを持って行ってくれ」
「は? 病人にぶどう酒とケーキ食わせるとか、鬼かよ」
 それに、今のローの姿は女装です。
 こんな格好で外に出たくはありませんでした。
「テメェで行ってこい」
「フッ。お前は一生その姿で過ごしてェらしいなァ、ロー」
「行ってきます!」
 ドフラミンゴの大きな手がローの目の前で広げられたので、ローは手提げ籠を持って慌てて家から飛びだしました。
「森には怖い狼がいるから、寄り道すんじゃねェぞ」
 背中にドフラミンゴの声を受けたローは、ハァとため息を吐いて森に向かいます。
 ババアの住む家に向かうには、この森の中を通って行かなくてはなりません。
「別に狼なんざ怖くねェけど……。早速出たか」
 ブツブツ言いながら森を進んでいると、ローの目の前に大きな狼が現れて、通せんぼをしています。
「ローじゃねェか。何処に行くんだ?」
「――コラさん。何やってんだよ」
 ローは顔見知りのコラソンに出逢い、そのコラソンの姿を見て呆れたように笑います。
 何故なら、今のコラソンは狼の着ぐるみを着ているからでした。
「いや、だって今日はハロウィンだろ? しかもラッキーアイテムは狼っていうから、もう狼になってやろうかと」
 ガオーッと言ってもふもふの手を見せるコラソンに撫でられ、ローは擽ったそうに笑います。
「それよりもロー。お前こそそんな格好でどうしたんだよ」
「――聞かないでくれ……」
 寂しそうにそう言って、ババアの見舞いにぶどう酒とケーキを届けに行くと伝えたローに、コラソンは嫌そうな顔をします。
「ババアって、あのコックのことだよな。ああ、そうだ、ロー。この脇道を少し行くと、花畑と一緒に薬草も沢山生えてるんだぜ。病気なんだったら、ぶどう酒やケーキよりも薬のがいいだろ?」
「あー、それもそうだな。煎じて飲ませてやるか」
 ローは幼い頃から医術を叩きこまれていたので、病状だけでなく、薬にも詳しくありました。
 コラソンの言うことは尤もだと言って、ローはドフラミンゴに寄り道するなと言われていたことも忘れて、花畑まで向かいました。
「クスッ。いい子だ。さてと、じゃあ……そのババアを始末しに行くか。アイツ、ローのことを狙ってたからなァ」
 コラソンは悪い笑みを浮かべて、ローが向かうよりも先にババアの家まで走りました。
 ババアの家に着いたコラソンは、ローの声真似をして扉を開けて貰うと、瞬時に銃を撃ちました。
「あっぶね! なんすんだ、ロー! って、お前は……!」
「また会ったな、サンジよ。これからローがお前の見舞いに来る。だからその前に始末してやろうと思ってな」
「いやいやいや、待て! 話が見えねェッ!」
 コラソンはその間にも銃を何度も撃ち、サンジは逃げ回って銃弾を交わしていきます。
「病人らしいお前がベッドに寝ている所にローが来てみろ。お前、そのままローをベッドに引きずり込んで食っちまうだろうが」
「当たり前――っ、だから、危ねェって!」
 これだけ激しく殺り合っているにも拘らず、コラソンの能力のお蔭で家の中は静かなものです。
「このまま邪魔者をやっつければ、代わりにおれがローを食える算段なんだっ!」
 だからおとなしく死んでくれと言ったコラソンの蹴りを蹴りで受け止めたサンジは、コラソンを強い意志で睨み返しました。
「それはこっちのセリフだっ! テメェを始末すればおれがローとメイクラブ出来るんだろ!? 負けてられるか!」
 激しい争いは何十分もの間続いていましたが、家の扉が開かれた気配を同時に察して、二人は慌ててベッドに潜り込みます。
「おい、見舞いに来たぞ。生きてるか?」
 普段は片付いている家の中ですが、今日はやけに散らかっているようにも見えます。
 ローは不審に思いながらも、籠をテーブルに置きました。
「おい、ババア。取り敢えず、何か色々とデカくなっってねェか?」
 布団の膨らみが有り得ねェ――
 ひとつひとつ聞くのが面倒なローは、纏めて聞きながら摘んできた薬草を籠の中から出します。
「それはな……ローを食う為だーっ!」
「抜け駆けさせるかーっ!!」
 異様に膨らんだ布団の中から飛びだしたサンジとコラソンを見て、ローは大きな口を開けて食いつこうとしてくる二人の口の中に薬草を突っ込んでやります。
「それ、死ぬほど苦いけど、めっちゃ健康になる薬草な」
 ピタリと動きを止めて真っ青な顔をする二人に背を向けたローは、暖炉で沸いていた湯で紅茶を淹れ始めました。
「ぐあああぁぁぁーっ! 苦ェェェッ!!」
 口を押えてゴロゴロと床に転がる男二人の様子を見ていたのは、何もローだけではありません。
 不穏な雰囲気を感じて家にやってきた猟師のスモーカーは、窓からその様子を見てそっと踵を返します。
「触らぬ何とやらに祟りなし、だ」
 ゴロゴロゴロゴロ――
 ひとしきり床を転がっていたサンジは、疲れたというようにベッドに戻ります。
「元気にはなったが疲れた……。少し寝かせてくれ」
 病気の所為で睡眠不足だったと言い、サンジはすぐに眠ってしまします。
 残されたコラソンとローは、サンジがぐっすり眠ったのを見届けると、二人で家を出ました。
「ロー。おれの家に来いよ」
 コラソンがローを誘います。
「久し振りだな、コラさんの家に行くの」
 小さい頃は毎日のように泊まりに行ってたコラソンの家ですが、ローが大きくなってからは、ドフラミンゴの監視がきつくて遊びに行くのも苦労するくらいです。
 そっと伸ばしたローの手がコラソンの手に触れます。
 コラソンはもふもふとした大きな手でローの手を掴むと、大きな一軒家まで来ました。
「いらっしゃい、ロー」
 扉を開けて家の中に入ると、美味しそうな料理がテーブルに並んでいます。
 部屋はハロウィンだけでなくお菓子の飾りもあり、見ているだけで楽しいとローは笑いました。
「今日はローを誘う予定だったからな。捕まって良かった」
「お誘いありがとう、コラさん」
 大きな狼が赤ずきんちゃんを大事そうに抱きしめます。
 ローが目を閉じると、当たり前のようにコラソンがキスをしました。
「トリック オア トリート?」
 楽しそうに笑ったコラソンがローに問います。
「お菓子、持ってねェよ」
 ローはコラソンのキスを受けながら、クスクスと笑って答えました。
「じゃあ、ローに悪戯しなきゃな」
 ひょい、と軽々ローを抱き上げたコラソンは、寝室のベッドにローを寝かせました。
 優しく覆い被さって何度もキスを交わしたコラソンは、剥きだしになっている太腿にもキスを落とします。
「んっ、くすぐってェ……」
 いつの間にかスカートは腰の辺りまで上げられていて、可愛らしいパンツが見えていました。
「マジかよ。かぼちゃパンツとか可愛いんだけどっ!」
 コラソンはそう言ってローのパンツをマジマジと見ますが、下着まで好き勝手に変えられていたことに、ローは恥ずかしさで泣きそうになりました。
「ぬ、脱がせるぞ」
 ゴクリと唾を飲んだコラソンは、ローのパンツに手をかけます。
 ローは恥ずかしそうに頷きましたが、コラソンの手の位置は変わりません。
「あの、コラさん……?」
 不安になったローはコラソンを見つめます。
「ぬ、脱げねェッ! え、なんで?」
 コラソンは頑張ってローのパンツを脱がそうとしていますが、ローの肌にぴたりとくっついているパンツはビクともしませんでした。
「え……、もしかして……」
 コラソンは恐る恐る手を伸ばして、ローのスカートも脱がそうとします。
「クッ! か、硬ェ!」
 触る分には柔らかい素材の服なのに、いざ脱がそうとすれば鋼のように硬くなる服。
「なあ、ロー……。この服って……」
 ローが好き好んでこんな格好をするはずがありません。
 答えは解っていましたが、コラソンは聞かずにはいられせんでした。
「ドフィが能力で作った……」
 無理矢理着せられたとローはいい、背中に影を背負って落ち込みました。
 そんなローの様子と先に進めない悔しさに、コラソンは拳を握りしめて怒ります。
「よし、ドフィ潰しに行こうか」
「お。おう」
 そう言って狼はバズーカを、赤ずきんちゃんはマシンガンを肩に担ぎます。
 森の中、サングラスをかけてバズーカやマシンガンを持ちながら歩く二人に、本物の狼たちは怖がって近づくことが出来ませんでした。
「たのもーーーっ!!」
 ドフラミンゴの家に着いたコラソンは、バズーカを構えて叫びます。
 ローも無言でマシンガンを構えました。
「フッフッフ、随分と物騒じゃねェか。ハッピーハロウィン?」
 屋根から颯爽と姿を現したドフラミンゴは、二人が動く前に能力の糸で動きを封じます。
「トリック オア トリート? フッフッフ」
「ク、クソッ!」
「クッ……」
 お菓子を持たない二人にドフラミンゴの笑みはますます深くなり、器用に指が動き始めました。
「ぎゃーーーっ!!!」
 突如として弾け飛んで消えた服に二人は叫びます。
「お前ら二人、今日は一日反省小屋だな」
 ドフラミンゴはそう言うと、コラソンとローの二人を地下室に閉じ込めました。
 とはいえ、その地下室はとても豪華で、風呂もベッドも食事も揃っていたので、コラソンとローは誰にも邪魔されずに二人きりの甘い時間を過ごせましたとさ。
 めでたし、めでたし。





END



[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ