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□BABY CRAZY DOCTOR
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「という訳だ」
「いや、訳解んねェから!」
ドフラミンゴに渡された白衣に身を通し、ローは眼鏡をかける。
インテリな眼鏡は正にローに相応しく、怠そうな表情がミステリアスさを普段以上に醸し出していた。
「似合っているぞ。ロー」
「おれは何を着ても似合うからな」
コラソンの言葉にフンッと鼻を鳴らしたローは腕を組み、白衣を翻して備えつけの椅子に腰を降ろした。
机を横に、右肘を付いて顎を手に乗せたローは、目の前の2人を見上げて先を促す。
「大手ブランドメーカー、シンギの新作だ。好きだろう?」
「まぁな…」
目の前の椅子に腰かけたドフラミンゴにローはニヤリと口端を持ち上げる。
幅広いジャンルを手がけるシンギのデザインは、ローが気に入っている物が多い。
だからわざわざ取り寄せてまで着させたのだと、目の前の若い医師をドフラミンゴは見つめた。
端整なローを今この場で押し倒してしまいたい気持ちを堪え、ドフラミンゴは自らのシャツのボタンを外していく。
「…おい」
額に当てられた聴診器にドフラミンゴは低い声を出し、楽しそうに笑っているローを睨みつけた。
「ククッ。身体は見る限り健康体そのものだ。問題は中身だな」
だからといって、その中身を額から調べるというのはどういうものか。
クスクスと笑うコラソンの声を背後にしながらドフラミンゴは聴診器を手に取り、おまけにローの手を握る。
「調べるのは、ここだろう?」
ドフラミンゴはそう言い、ローの片手を引きながら、もう片方の手で彼の頭を抱え込んで胸に抱いた。
「何する…っ!」
「フッフッフ。ちゃんと診察してくれよ、ドクター?」
胸に抱いた手は緩めようとせずにドフラミンゴが伝えると、ローは静かに、深くため息を吐き出した。
取り敢えず、手を伸ばして能力を使い、ローはドフラミンゴの心臓を取り出してやる。
「毛が生えているかと思ったがそうでもない。お前の心臓は問題なく健康だ、ドフラミンゴ」
「…お前な」
「望むなら、全ての臓器を取り出して見せてやってもいい。その方が安心だろう?」
心臓を片手にドフラミンゴの胸から彼を見上げたローは、その心臓に軽く唇を寄せて確かめるように舐めた。
生温かい心臓が舌に触れると、一瞬ドクリと跳ね上がったのが解る。
「フッ、フッフッフッフ。噛みつくなよ? ロー…」
そう言われると反対に実行してみたいものだ。
ローはそう思いながら、ドフラミンゴの前で口を大きく開けて見せてやる。
「参った。降参だ、ドクター」
ドフラミンゴはローの拘束を解き、大袈裟に両手を挙げてみせた。
ローから心臓を取り返したドフラミンゴは、離れる間際に彼の唇を奪う。
「…っ」
報復は痛いほどの噛みつき。
ドフラミンゴの唇を舐めたローは、舌に濡れた彼の血を見せつけるようにして笑い、それを己の元へと戻して味わう。
「ククッ。何の問題もねェ。お前は健康体以外他はねェよ、ドフラミンゴ」
「これまた、痛ェ診察だなァ、ドクター?」
噛み切られた唇を舐め、ドフラミンゴも同じように笑う。
相変わらずのやり取りに、コラソンは肩を竦めながらドフラミンゴと代わって席に着いた。
「お手柔らかに? ロー先生」
クスリと笑ったコラソンに、ローは先程までとは違った笑みを浮かべ、手を彼のシャツのボタンにかけた。
時間をかけて外されていくボタンは、どこか焦らされているように感じてしまう。
眼鏡の奥に映るローの鋭い眼を見つめながら、コラソンはただおとなしくしていた。
全てのボタンが外され、聴診器が何度か身体に触れたと思っていたら、ローの手が直接コラソンの肌に触れてきた。
「ロー。いつも思うが、何でおれとコラソンの扱いはこうも違うんだ?」
それは態度の違いからだとローは言いたかったが、ドフラミンゴの問いに笑みを浮かべたままでコラソンへと身を寄せた。
「ただの触診だろう? 何か問題でも?」
ローはそう言いながらコラソンに抱きつき、柔らかな唇を触れ合わせた。
「コラさん…、あったかい…」
夢中になって唇を合わせていると、ローの身体を抱き上げたコラソンが膝の上に彼を乗せて、更にキスを深いものに変えていく。
触れ合った唇がしとどに濡れた頃には、もう邪魔でしかないローの眼鏡はコラソンによって机の上に乗せられた。
「ん…っ、ふ、ぁ…」
水音と甘い声が響きはじめた頃、ドフラミンゴは先程までローが座っていた椅子へと腰を降ろし、椅子を滑らせて彼の背後に限界まで近づいた。
「じゃあ、おれたちも診察させてもらうかな? なァ、ドクター」
ローの耳許でドフラミンゴの甘い囁きが聞こえる。
「ロー。全部診てやるからな」
もう反対側の耳許ではコラソンの囁きが。
「ん…」
ローの新しい白衣が、淫らに揺れた。
END
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