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□LOCK AND LOLL
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 困ったことになってしまったと、男2人が顔を見合わせる。

 はじめは、からかうだけのつもりだったのだ。

 地下に造らせたバーに連れ込み、普段からあまり酒を飲むことをしない彼をからかい、いつも以上に酒を飲ませた。

 酔い潰させようとかそういった疚しい理由からではなく、ただ純粋に酔った彼がどんなものなのか見てみたかったのだ。



「おい、ロー。大丈夫か?」



 いつもならグラス1杯でそれ以上飲まないローに、ボトル1本飲ませた悪い男が2人。

 ローを目の前に、どうしようかと頭を悩ませている。



「ふ…っ、ぇ…」



 何故、頭を悩ませる必要があるのか。

 それは目の前のローが顔を赤く染めながら、ずっと泣きじゃくっているからだった。



「ぅっく。ぅぇえ…」



 抱きついてくるとか、キスしてくるとか、脱ぎはじめるとか、別にそんなことを期待していた訳ではない。

 いや、本当にしていないと問われれば、答えは否だが。



「どうしよ…、ドフィ…」



「おれに聞くな、コラソン…」



 日頃あまり懐かない猫を懐かせてみたかったと、そういった2人の考えは、目の前で泣きじゃくるローを見て考えを改めた。

 絶対に見られないであろうローのこのような姿を見られるのはとても嬉しいことだったが、かれこれ数十分も泣き続けている姿を見ていると、胸が痛んでしまう。

 これならまだ、絡み酒の方がマシだった。

 1人で泣き続けるローに、いくら声をかけたところで泣き止む素振りを見せない今、ドフラミンゴとコラソンはもう両手を挙げて降参したかった。



「ほら、ロー。もうそろそろ寝ようか?」



 これ以上飲ませる訳にもいかないし、かといってこのまま放置する訳にもいかない。

 コラソンはそう言いながらローの肩に手をかける。



「いやだーっ! うわーん!」



「ぅげ…っ!」



 振り上げられたローの手は、コラソンの首にクリティカルヒットする。

 コラソンが触れることによってじたばたと暴れはじめたローに、ドフラミンゴは顔を引き攣らせた。

 まるで駄々をこねる子供ではないか。

 解決策が見つからない分、ある意味子供よりも性質が悪い。

 もうこうなればいっそ、無理に飲ませて潰させてやろうかと、ドフラミンゴが新しいボトルを手にしてローに近づいた。



「ロー。飲もうか」



 触れて暴れられるのは嫌なので、ドフラミンゴはローの隣に座って新しい酒が入ったグラスを差し出す。



「ひ…っ、く、うぇ…」



 どうやらこの行動は正解だったらしく、おとなしく酒を飲みはじめたローに、ドフラミンゴは安堵の息を吐く。

 しかしそれは2杯目のグラスを傾けた時、起こってしまう。



「ぁふ…ぅ…」



 悩ましげな声を上げたローが、グラスを落としてしまった。

 その婀娜のある声と強烈な色気を放つローから2人が目を逸らせないでいると、再び彼の目から涙が流れはじめた。



「ぅ、ぅえええーんっ!!!」



「ロー…っ!」



「またか…っ!」



 大音量の泣き声に慌てるドフラミンゴとコラソン。

 ローは濡れた服が気持ち悪いらしく、次々と脱いでいく。

 おいし…いや違う、マズイと2人は感じた。

 先程のローの色気に充てられて、勢いに任せて襲ってしまいそうだったから。



「待てっ、ロー!」



「落ち着けっ!」



 ローが上着を全て脱いでズボンの前を開けた時、慌てた2人が手を掴んでその動きを止めた。



「う…っ、ぅう…」



 触れたことによってローが涙を溢れさせる。



「ぅわわわーーーんっ!!!」



 再び部屋を支配した泣き声に、収拾がつかなくなった2人はローを押さえ込んだ。

 もうこうなったら無理に酒を飲ませて潰すと、ボトルをローの口に持っていく。



「やぁぁーーーだーーーっ!!!」



「こらっ! 暴れるな!」



「おとなしくしろ!」



 頭を振って嫌がるローに、ドフラミンゴとコラソンは声を上げる。



「いやーーーっ!」



 癇癪を起こしたように叫んで嫌がるローを更に力を込めて押さえつけると、部屋の扉が開いて怒鳴り声が響いた。



「…っ!? あーたたちっ! ローちゃんに何やってるざますっ!!!」



 勘違いされてもおかしくない現状。

 言い逃れの出来ない状態に、2人は降参とばかりに両手を挙げた。



「ジョーラぁぁーっ!」



「よーしよしよし、ローちゃん。もう大丈夫ざますよ! どうしたざます?」



 しゃくりあげながらジョーラの名前を呼ぶロー。

 ドフラミンゴとコラソンはデジャヴに襲われた。



「ベポ…。ベポがいないーっ!」



 わんわんと泣くローに、ジョーラはその頭を撫でてドフラミンゴを見る。

 幼い頃のローは自分よりも大きなシロクマのぬいぐるみを、それはそれは大切に可愛がっていたものだ。

 ある日、コラソンが煙草で焦がしてしまい、それをドフラミンゴが捨てた。

 新しい物を買ってやればいいと、そう思っていたのに違ったらしい。

 その日を境に嫌われたもんだと、ドフラミンゴとコラソンは項垂れる。

 ローの教育係だったジョーラは上手く宥めていたが、心の奥底でまだそのことを忘れられないでいたのだろう。

 ジョーラに訴えるような目を向けられているドフラミンゴは、肩を竦めながら指を操った。

 勢いよく出される糸が編み込まれ、大きなクマの形を作っていく。

 記憶を頼りにしながらオマケとばかりに更に大きなシロクマを作るドフラミンゴ。



「ほらよ!」



「っ! ベポーっ!!!」



 特大サイズのシロクマのぬいぐるみを作ったドフラミンゴがそれを見せてやると、涙を止めて破顔しながらベポに飛びついた。



「ぐふ…っ!」



 巨大なシロクマとローの重みに潰されるドフラミンゴ。

 泣いたり笑ったり忙しいやつだと、そう思いながらドフラミンゴとコラソンは苦笑を浮かべた。















 朝、目を覚ますと、目の前に大きなシロクマのぬいぐるみを見つけて驚くロー。



「───ベポ…?」



 どうして同じベッドに入っていたのか、それがどうして在るのか、どうして自分がそれに抱きついて眠っていたのか解らずに、ローは頭を悩ませた。

 けれど懐かしいぬいぐるみに、微かに笑ったローは嬉しそうに頭をそのもふもふに埋める。

 明け方までジョーラに説教を喰らっていたドフラミンゴとコラソンは、そのことを知る由もなかった。















END



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