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□それはダメだロー 2
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「ゃ…だめ…っ!」



 部屋の隅に追いやられたローは、懇願するように自分に覆い被さるドフラミンゴを見つめた。

 いつもはこんな無理なことはしないのに、今日はどうしてこんなことになっているのだろう。

 肩に置かれたドフラミンゴの手に、ローはビクリと反応した。



「ぁ…いや…」



 近づいてくるソレから目を逸らし、ローはぎゅっと目を閉じる。



「ロー…」



 耳許にかかるドフラミンゴの吐息混じりの低い声。

 泣き出してしまいたい気持ちを抑え、ローはそれでも目を開けられずに身体を強ばらせた。



「ちゃんと見るんだ、ロー」



 更に近づけられたソレに、ローはついに嗚咽を漏らせた。



「や…だぁ…っ…」



 閉じていた目から、ポロリと涙が溢れ出す。

 ドフラミンゴはローの涙を拭ってやると、大きく溜め息を吐いた。



「慣れなきゃ、どうしようもねェだろう?」



 こればかりは仕方がない。

 隙があれば逃げ出そうとするローを腕に抱きしめ、ドフラミンゴはじっと彼を見つめる。



「ロー。先に言っておいてやるが、コラソンの所に逃げようとしても無駄だぞ」



 逃げ道は既に塞いである。

 ドフラミンゴは口許を笑みに歪め、震える小さな身体を抱きしめた。



「な…ん、でぇ…っ?」



 どうしてこんなことをされるのかが解らない。

 軽くパニックをおこしているローは、涙で濡れた目でドフラミンゴを見つめた。

 その目にドキリとしてしまうが、今日はローを逃がしてやる気はない。

 慣れてもらわなくては、これから困るのは自分だけではなく、ローだってそうなのだ。

 それなのに、ローから発せられた次の言葉に、ドフラミンゴは固まってしまった。



「ふぇ…、き、嫌いになっちゃうんだからっ! ドフラミンゴのことっ…」



(それは反則だっ!)



 涙で濡れた目で自分を見上げながら伝えるローの顔は破壊的で、ドフラミンゴは息をすることすら忘れてしまう。

 その隙にローは彼の腕の中から抜け出したが、それでもドフラミンゴは動けなかった。










 パタパタパタと、長い廊下を走り、ローは大きな扉を開ける。



「コラさ…っ、きゃーーーっ!!」



 コラソンの部屋に入ろうとしたローは、足を踏み入れることが出来ずに叫んだ。

 その叫び声に、眠りについていたコラソンは飛び上がる。



「どうしたロー…って、うぉっ、なんだこの電伝虫の大群はっ!」



 部屋一面に並べられた電伝虫たち。

 それを見たローは部屋に入ることも出来ず、その場にぺたりと座り込んでしまう。

 コラソンはコラソンで、足の踏み場もないほど埋め尽くされた電伝虫に、ベッドの上から動けずにいた。

 誰の仕業か考えるまでもない。

 兄の行動に頭を抱えようとした時、部屋の入り口でローの声が聞こえた。



「シャンブルズ!」



「ごふっ!!」



 被っていた布団の代わりに腹に重みがかかる。

 思わず噎せたコラソンの腹の上には、いつの間にかローが乗っていた。



「お前…いつの間に新しい技───」



「コラさんコラさんコラさんっ!! あれっ、あれなんとかしてっ!」



 完全にパニックになっているローは、コラソンの話など聞いちゃいない。

 部屋一面に埋め尽くされた電伝虫に、それを見たくないというようにローはコラソンにしがみついている。



「なんとかって言われても…」



 しがみつくローをあやすように撫で、コラソンは困ったように溜め息を吐いた。

 はっきり言って、あれだけ埋め尽くされていたら身動きが取れない。

 コラソンは震えるローを抱きしめ、落ち着かせるように何度も頭を撫でてやった。



「ロー…、いい加減に慣れたらどうだ?」



 兄のように荒療法はしないが、今後必要になるのだから慣れておかないと困るのはローだろう。



「だっ…て、あれ、気持ち悪い。可愛くない…」



「そうは言ってもなぁ…」



 ファミリーに入った時から蝶よ花よと可愛がられ、ローの身の回りに置かれるものは誰が贈ったのか、可愛らしいぬいぐるみで溢れていた。

 それを考えるとローの気持ちも解らないでもないが、それでも慣れてもらわなくては困るというのはドフラミンゴと同じ思いだ。

 それでも、ぎゅっとしがみついてくるローに無理強いは出来ず、コラソンはその身体を少しきつく抱きしめた。

 それよりも、ベッドから動けないのはどうしたものか。

 それに、布団がないのは肌寒い。

 暖を取るように全身で覆うようにローを抱きしめると、部屋の入り口から殺気が放たれた。



「どういうことだ、コラソン」



(それはこっちの台詞だ…)



 殺気の主は、ローを抱きしめるコラソンに向けられている。



「何故ローがお前のベッドにいる…」



 しかも二人仲良く抱き合って。

 コラソンの部屋には近づけないように細工をしてあったというのに、どうしてローは無事に辿り着けたのか解らない。

 部屋を見る限りでは、自分が細工した時の状態のままで電伝虫が並べられてある。

 状況を理解しようと頭をフル回転させようとした時、頭に投げつけられたソレにドフラミンゴは顔をしかめた。



「こらっ、やめろっ! 電伝虫を投げつけるな!!」



 足元にある電伝虫を次から次へとドフラミンゴに向かって投げつけていくコラソン。



[ローもてつだって]



「え…、でも…」



 ドフラミンゴに電伝虫を投げつけながら、コラソンはローの手に電伝虫を乗せた。



「きゃっ!! ぃやああー、気持ち悪いっ!!」



 ドゴッと、音を立てながらドフラミンゴの顔に命中したローの投げられた電伝虫。

 乗せては投げてを繰り返す。

 ローとドフラミンゴの悲鳴が止まったのは、コラソンが無事に布団を取り返した頃だった。















終われ

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