陛下に捧げる三月兎の行進曲 c/w サド侯爵と俺

□§2 第2夜−3 Side鼓
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Side(鼓)
 〈陛下〉は、今夜も、キラッキラだから。にっこりされると、心が弱りそうだけど。
(ダメ! ここは厳しく!)
 笙も言ってた。このままだとお前、絶対後悔するし、するとわかってる後悔をすんのはバカだけだぞ、と。──名言。
「どうして、嘘ついたの?」
「え……? あれ、いいって、言いませんでしたか? ツヅミと、打ち合わせた通りに言ったつもりだったけど……」
 少し大げさすぎたかな、って、心配そうにしてる。ほんとにいい人だな、〈陛下〉……。
「それじゃなくて。──殺されるなんて、言わなかったじゃん。できなかったら、殺されるなんて……」
 うわ、なんか、涙出てきちゃった。カッコ悪。
「わ、ツヅミ、泣かないで。ごめんなさい。悪気は、なかったんだけど」
 〈ツヅミには、関係ないと思ったから〉
 って。薄情だから。もう、マジで、涙止まんなくなる。
「袖振り合うも他生の縁とか! 一期一会とか! そういう素敵な言葉はこっちにはないの!?」
「あ……いえ、なんとなくは翻訳されてますので……ない、わけではない、かと」
「一晩一緒に寝た仲じゃん! 〈陛下〉が、死んだら、オレはすっごく悲しいよ。なのに」
 関係、ない、とか、言うんだ……。
「あ、ご、ごめん。ごめんなさい……ツヅミ」
「謝ったってダメだから。オレもう、昨日の約束はなかったことにしたから。〈陛下〉が先に嘘ついたんだからね。おあいこだから」
「──あ、うん。……約束って……」
 何?と、聞こうとする〈陛下〉を、えいや、っとでっかなベッドに押し倒す。
「わ。ツ、ツヅミ……何?」
「オレだって、一応、召喚されてきたアレだからね。ものっすごい、ちょっとの可能性だけど。ないわけじゃないでしょ。だから」
 試す!
「や──やめて、ツヅミ。ちょっと……」
 〈陛下〉の部屋着は、どうなっているのかよくわからなかったけど、いろんな紐をかたっぱしから解いてみたら、なんとなく、はだけた。よし。男相手は初めてだから……というより、女のコ相手だってそれほど大した経験もないから、手順がわからないけど。
 いざとなったら本能でなんとかなる、と、笙が言ったから。がんばろう、オレ!
「あ、オレも、脱がなきゃか」
 来る前に、ナジャルさんに、なんだかひらひらしたゴージャスなネグリジェみたいなものを着せられたんだった。ええと。いろいろ引っ張ってみるけど。脱げない。ええいもう、あたまから抜いちゃえ。
 よいしょ、と、あたまから寝巻きを引き抜くと、それだけですっぽんぽんになる。便利! 顔を上げると、なんか……笑われてる……?
「ちょっと〈陛下〉! 襲われてるほうが途中で笑うとか!」
「ご──ごめん、だって。なんか、ツヅミ、可愛いから」
 正直言うと。カワイイと言われるのは、そんなに嫌いじゃない。
「はいオッケー。じゃあ、シよう!」
 いつのまにか布団にもぐりこんで身体を隠していた〈陛下〉が、え?と、聞き返す。
「だって、オレ初めてだもん。女のコとはしたことあるけど。〈陛下〉は慣れてるでしょ。だから、リードしてね?」
「そんなこと言われても……ツヅミが、私を襲うんでしょう?」
「細かいことはいいから。っていうか、ズルいじゃん、自分だけ隠れて」
 あ、どうぞ、って。〈陛下〉は布団をめくって、オレを中に入れてくれる。えへへ。
「わ。ツヅミの身体、熱い……」
「あーほんとだ。見た目ほとんど変わらないけど、体温とかは違うのかな」
 〈陛下〉の身体は、なんとなく、ひんやりしていて。──すべすべだ。
「ツヅミ……あんまり、さわらないで……」
 恥ずかしそうにしちゃって、カワイイ。って、いうか。
「見た目変わらないって、ほんとかな。服着た人しか見てないからな」
 ほんとに同じか調べてみよう、と、布団にもぐりこむ。暗くてよくわかんないな。布団はいじゃえ。って、はいじゃうと、わ、と〈陛下〉は、可愛い声をあげる。
「……恥ずかしいの?」
「恥ずかしいよ。あたりまえでしょう」
「だって、毎晩いろいろされてたんでしょ?」
「そういう人たちとは、たいてい二度と会わないし。ツヅミとは、昨日たくさんお話して……友達に、なっちゃったから……」
 オレのこと。友達って、思ってくれてたんだ。なんか……感動。
「ツヅミ──どうして泣くの。私は、また何か、悪いことを言いましたか?」
「違う。これは、嬉しくて泣いてんの。オレ泣き虫なんだよ」
 うん、そうみたい、って、〈陛下〉は笑う。
「それで、いつもはどんなことするの? 一応、一通り試してみよう?」
 どんなことされたの? 気持ちよかったのある? と、聞くと、陛下は身体中まっ赤になって。
「そんなこと言えません。もう、ツヅミは、意地悪だ」
「違うよ、親切だよ。〈陛下〉のためを思って言ってるんじゃん。なんでそんなに非協力的なの。オレが相手じゃ不満なの?」
 オオカミの人とかは良くて、オレがダメというのは、非常に納得が行きませんけど。
「そういうわけじゃないけど……だけど、やっぱり、恥ずかしいから……」
「うーん」
 困った時の笙語録を、頭の中で検索する。〈女のコが、恥ずかしいと言ったら、それはOKってコト〉。そうだ、たしかそう言ってた、笙が高二の夏。
「じゃあ、まあ、いっか」
 え? と言っている陛下を仰向けに転がして。上に乗り上げる。改めて見ると、ほんとに……
「すげぇ……キレイ……」
「──え……?」
「金色で。白くて。キラキラして……内側から光ってるみたいだ、身体」
 困った顔でオレを見あげる〈陛下〉の唇に、ちゅっと、キスする。
「あ……!」
「えへへー。役得」
 あれ、なんか、微妙なカオされてる?
「ごめん、ヤだった?」
「──イヤっていうか……初めて、だった」
 ────えぇえ!? 嘘!?
「ごごご、ごめん。え、なんで? だって、毎晩、なんか、入れかわり立ちかわり」
「……そうなんだけど……その、そういう人たちの目的は、やっぱり、あの……〈採取〉だから。なんていうか、ええと」
「──下ばっかなんだ?」
 〈陛下〉は、またちょっと恥ずかしそうにしたけど。諦めたみたいに、うん、と言った。
「それは。もったいないね」
「──もったいないって……」
「こんなキレイな身体。全部キレイなのにね」
 ちゅっと、首筋に口をつけると、ぴくん、と震えるのがわかる。可愛い、な……そのまま、白い、少し冷たい肌の上を南下する。ピンク色の乳首のあたりで、少し停滞して。舌で転がすと、あ、って、ちょっとだけ鳴いた。
「感じないわけじゃないんだね、身体。気持ちいいんでしょ?」
「ツヅミ……そんなこと」
 それだけのことで、すごく恥ずかしがるのは、すごく可愛いけど。ひょっとして、この受け身の感じとか──育ちの良さが、邪魔になってるんじゃないかな。
 更に下にさがる。舌でなぞるごとに、少しずつ肌は桜色になっていくのに、やっぱり肝心の部分だけが反応していないから。あえて、そこには触れないようにする。脚の内側を舐めると、少しずつ、〈陛下〉の身体も温かくなっていくのが、わかる。
 そのまま脚を持ち上げて、お尻のほっぺたにちゅっとすると、びくん、と身体全体が揺れて。なんか、ちょっと……期待感すら、感じる、ような? 気のせい?
「〈陛下〉……バージンって、ほんと?」
 驚いて、身体を起こそうとするのを、もういっぺんペタンと仰向けにして。金色の目を見て、もう一回聞く。
「ほんと?」
「だって……そっちは、関係ないし……」
「成人までしたことないの、すごく珍しいって、ナジャルさん言ってたけど」
「それは──そうだと思うけど。私は、その。恋人、とか、いたことがないし」
 そっか。初めては好きな人にあげるんだったっけ。
「オレとじゃ──やっぱ、ヤだよね?」
「え、あの、イヤっていうか……そんなの」
 〈恥ずかしいよ〉。
 と、言われて、これはOKってこと?と、ちょっと考えるけど。確か。
(了解を得ないでヤっちゃうと、死罪になるんだったか)
「わかった。じゃ、最後まではシないからね」
 よし、と肯いて。もういっぺん陛下の脚を、持ち上げて、顔を寄せる。
「え? 何? ツヅミ──何するの!?」

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