【更新中】〈練習帳シリーズ〉

□  〈幕間〉『開いたゴマの行方。』2
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【伊丹目線/つづき】

 ドリのことを気にする銀河を見てると、なんや苛々してくる。
 いや、俺かて、気にはなっとる。あいつがあんな取り乱すことなんかめったにないし、ひなこがドリのとこにおったいうんも意外やったし。けど、それはそれや。
「泊まってくやろ?」
 銀河が部屋に来たとたんに、ドリから電話がかかってきて、今夜はまだ手ぇも触れとらん。せやから余計に苛々するんかもしれへん。
「うーん」
 何? そこ考えるとこか? ふだんは二つ返事やんか。俺が、たまには家で寝ぇやて言うたらスネたやんか。
「今日は帰るわ。ひなこちゃんのこと心配やもん」
「お前が帰るのとひなこと関係あれへんやろ」
「ナツに相談してみな。オレらには言われへんことでも、女同士なら分かるかもしれへんやろ?」
「心配なんはひなこか」
 思わず嫌味も出る。
「ドリのこと気になっとんちゃうんか」
「両方」
 あっさり言うて、銀河は既にスニーカーをつっかけている。待て待て、今すぐ帰るつもりなんか。
「もう帰るん?」
「うん。早い方がええやろ。イタさんも、ドリさんにもっぺん電話してみたら?」
「アホか。大人同士のことやろが。放っといたれよ」
 あーあ、て、銀河は軽くため息をつく。
「ほんまドライやね、イタさんは」
 ドライ?
「まァ、でも、オレが直接聞いたほうがええかもね。イタさん通すと、よォ分からんようになるもん」
 ……腹立つ。
 腹立つから、上着忘れて出てってしもたけど、教えてやらへんかった。
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