10/26の日記

11:22
前巷説百物語。
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京極夏彦著
(角川書店)

『前巷説百物語(さきのこうせつひゃくものがたり)』


京極夏彦さんは、
女子目線でのBL的「萌え心」を
上手にくすぐることのできる、
稀有な男性作家だと思う……。

百物語シリーズでも、
全然そうじゃないよ!とわかっている又市さんが
たぶんそうじゃないよ!と思われる百介さんに
そういう(どういう?)冗談を言うのターンがあったりして、

  期待させんなよ!

と思ったりしていたものですが(←自分の問題。)
これははっきりしているので(↓)記す。


【疋田さんと岩見さん。】

連作中「周防大蟆(すおうのおおがま)」の依頼人。
 というか、損をしたひとたち。
 (あなたの損をお金で買いましょう、
  という「損料屋」のお話なため)

藩主の若様(男色家也。)が
疋田さんに横恋慕したあげく、
手ひどくことわられ
(というかちょっとお説教され)

腹いせに疋田さんと恋仲だと思い込んだ
岩見(兄)さんをお手討ちに。

のみならず、
その罪を疋田さんに着せて、
岩見(弟)さんに
 ムリヤリ敵討ちをさせようとする。

というのが「前提としてのお話」で、
さあその損をどう取り返しますか、
というのがストーリー自体の眼目なので、
BL要素はあいまにさらっと出て来るだけなんですが、
 
いや、充分、ドキドキする。
    (自分の問題か?)

ごく個人的な印象では、
どうも岩見兄弟はわりに美形に設定されているぽいんだけれども、
若殿に懸想される疋田さんのほうは、

腕が立って、真面目で、潔くて。

みたいな善き人には描かれているけれども、
どうもそれほど、見た目がうるわしいわけではないらしいので。

……若殿、見る目あるじゃん。

とちょっと思った。
いやしかし、無理強いはいかん。

そしてまた、
事件のおおもとの原因が
「男色家の三角関係」
だと知った際の、ヤング又市くんの

 いや俺、別にそんなので驚かないもんね、
 
的なことを表明しようとして見事に失敗している(と思われる)うろたえっぷりが、
江戸っこぶってるけど、武州の産、
という設定をうるわしく反映している。
 と、勝手に思った。

 かつ、京極夏彦のくすぐり加減、という意味では、
 京極堂シリーズの「鉄鼠の檻」が必読だと思う。
 (※偏った読書例。)

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