夢小説
□#5 ショッキング!?
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マネージャー業が慣れてきたある日ー
現役引退したとはいえ、目の前でバスケをしている姿をこうも毎日見るとやはり体がウズウズしてしまう。
授業が終わればすぐに部活がはじまり、神の日課であるシュート500本まで付き合えば帰宅は9時、遅い時は10時になる。自分がバスケをする時間は全くと言っていいほど0に近い。
時間を作るとすれば…
名無しさんはお昼を早々と終わらせ、体育館へ向かった。あまった昼休みの時間をバスケに充てようと考えたのだ。
いつもなら神や他のクラスメートと談話して過ごすのだが、根っからのバスケ少女にはこの時間は大切なのだろう。
そこまで時間がある訳ではないので、上履きからバッシュに履き替えるだけ。制服で軽く動くくらい。だが、さすがにブレザーのジャケットは脱ぐ。
しん、とした体育館にボールを打つ音が響く。
ドリブル、シュート。アウトサイドからインサイドのシュート。どれもブレなく綺麗に確実に入れていく。
男子とは異なる柔らかなフォームでシュートを放つ。
牧「もうすぐ授業始まるぞ!」
「!!? 牧さん?!」
体育館の入り口からこちらを覗いている。
どうやら集中し過ぎて予鈴のチャイムが聞こえなかったみたいだ。
「すみません…集中しててつい。でも牧さん、なんでここに?牧さんも教室に戻らないと授業に遅れちゃいますよ?」
牧「部室に忘れものをしてな。俺はこの後自習だからな。いつ教室に戻っても大丈夫なんだ。」
「そうなんですね。私も次の時間サボっちゃおうかなー?なんか勉強って感じになれなくて。今はバスケのことで頭いっぱいにしたいんです。」
牧「だがな、最初のうちから授業出ないと分からなくなるぞ?」
「次は英語だから分からなくないですもーん♪」
アメリカ帰りですもん!と口を尖らせて生意気に屁理屈を言う。
「バスケをやめても、やっぱり私の土台はバスケなんです。どんな形であれ、バスケからは離れられないみたいです。」
少しシュンとしてしまったが、またいつもの名無しさんに戻り
「私、実はダンクも出来るんですよー♪」
と言ってダンクを一発決めた。
「どうですか、牧さん?」
褒めて貰えると楽しみにして牧に尋ねると、牧の顔がほんのりピンク色に染まる。
「どうしたんですか?牧さん??」
牧「いや…名無しさんって結構派手なんだな…」
「いやいや、ダンクなんてそんなしょっちゅう決めるものじゃないですからー。そんな派手なプレーしませんよ?」
牧「いや、そういう意味じゃなくてな…あ、…うーん…その…しょっ、…」
「しょ??」
牧「いや、なんでもない。女子のダンクは見たことがなかったから驚いた。そう!ショッキングだってことだ!」
「ショッキング?そうですかー!?」
そう言って名無しさんは飛び跳ねて喜んだ。そして何かを思いついたように
「牧さん、これまでの試合のビデオってありますか?」
牧「あぁ、部室にあるが。…というか本当に英語サボるのか?」
「はい!じゃあ牧さん、一緒に部室へ行きましょう♪サボり仲間同士♪」
俺はサボりじゃない、と思いながらも名無しさんに腕を掴まれれば逃げられない。
牧「先輩にちょいと馴れ馴れしくはないか?名無しさん?」
「んー、牧さんは先輩としてもプレーヤーとしても尊敬してますけど、私のことを良く知ってる数少ない大事な人なんで!」
牧「…それ、答えになってるか?」
心を許した人間には人懐こさを見せるんだろう、彼女の心の拠り所になれればと思えば嬉しいものだと思いながら牧は一緒に部室へ向かった。