ぼのぼのぐらし
□もしも透明になれたら・後
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アライグマくんは本当に色々なところを知っているなあ。
ぼのぼのはアライグマくんの背中を見ながら密かに感心していた。
それにしても、透明になれる場所ってどういう場所なんだろう。
すごい高い山の上だろうか、入り組んだ洞窟の奥だろうか…、もしかしたら怖いお化けがいるところかも知れない。
ぼのぼのはそこではっとある事に気づく。
そうか、そこにはしまっちゃうおじさんがいるんだ。しまっちゃうおじさんがその透明になっちゃう場所にいった子を、皆が気づかないうちにしまっちゃうんだ。突然居なくなったから、皆はその子を透明になったって勘違いしちゃうんだ。
「もうだめだ〜!」
ぼのぼのは膝をついて泣き始めた。
「何がだめなんだよ。」
アライグマくんは歩みを止める。
「ほら、ついたぞ!」
「え?」
ぼのぼのは顔をあげる。
そこは少し森が開け、広場のようになっていた。しかし特におかしなものもない、何の変鉄のない場所だった。
「ここ?」
「ああ」
ぼのぼのはアライグマくんを見る。
「ここ?」
「ああ。」
ぼのぼのは広場をみる。そしてもう一度アライグマくんを見た。
「こ「嘘じゃねえよ!!!」
アライグマくんはぼのぼのをこづいた。
「でもぼのぼのちゃん、私たち透明になってないわよ!」
シマリスくんが意気揚々という。確かに三人とも透明にならなかった。
しかしアライグマくんはシマリスくんの言葉を聞いて、焦るどころかニヤリと笑う。その笑顔に、シマリスもぼのぼのも同時に危険を察知した。
「ところが、この話には続きがあってな………」
「誰も透明にならなくてよかったね。シマリスくん。」
「そうね、ぼのぼのちゃん。」
「おい。」
話をしだそうとしたアライグマくんをあからさまにぼのぼのは遮った。
「じゃあ噂は嘘だったんでぃすね!」
「そうだね。よかった。」
「おい。」
「じゃあ帰りましょうか、ぼのぼのちゃん。」
「そうだ「勝手に帰ろうとするな!」
アライグマくんは怒鳴る。
「むしろこっからなんだよ!」
アライグマくんは咳払いをする。
「その透明になった奴っていうのが、踊る事が大好きだったらしくてな。その日もこの広場のちょうど真ん中で、くるくる回ってたらしいんだ。そしたら……」
「「そしたら?」」
「ちょうど10回転したときに、すうー…と体がすけていってな、本人はそのことに気づかずに回り続けていたんだ。周りにいた連中が驚いて止めようとしたが、多分冗談だと思ったんだろうな…。結局、回ることを止めなかったそいつは最後には完璧に消えちまったんだってよ。」
アライグマくんの話を聞き終えたシマリスとぼのぼのは無言で頷きあった。そして意を決したのか、静かに元来た道へと帰っていくのだった。