Secretstory

□SecretstoryT
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第1章 片思いの人間の冒険






―――ビートン校 教頭室








「また君はそのような恰好をしているのかねナマエ・ミョウジ」

「モリアーティー教頭。いくら私たちしかいないとはいえ、その名前で呼ぶのはやめていただけますか?」




緑のクーパー寮の服を着た男子生徒は
教頭室の上等な机に腰掛ける細身の
金のブロンドに琥珀の瞳の男に吐き捨てるように言い放った。



「君は立場を理解していないようだねぇ」



生徒の不躾な態度にも関わらず
いさめることもなく立ち上がると
男子生徒に向き合い見下ろした。




「またあのバカな優等生をたぶらかしたのか?本当に悪い子だ」



モリアーティーと呼ばれた男は
男子生徒の襟元に指を置くと
スッと胸から腹へと下にとなぞらえた。

パン!!!

その細く骨ばった手は乾いた音とともに
はじかれた。


「痛いじゃないかナマエ。せっかくのかわいい顔が台無しだよ。」


モリアーティーは悪びれた様子もなく
赤く色づいた自分の手をさすった。


「誇りまで捨てた覚えはない。気安く触るな。」

「これだから猫は。自分の都合がいいときになついて、自分の都合で爪をたてる。」


「では、報告はした。失礼する。」

「ナマエ。今夜は上等なミルクティーを用意した。待っているよ。」






背を向ける男子生徒にそうモリアーティーが言い放つと何も言わずにその生徒は扉を強く閉めて出ていった。


モリアーティーは満足げに一人窓辺で赤く腫れた手を光に照らすと、そこに唇をおとした。


「いつ服従するか楽しみだよ…。」


教頭室に喉をククッと鳴らして笑う声だけが響いた。








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