長編 悪魔の万華鏡

□万華鏡 悪魔の契約
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美しい瞳は閉じることなく私を見つめる。
最近は魔女狩りとかいう物騒な催しが流行っている。私を悪魔だと聞き悲鳴を上げることができない程に恐れているのか…
可愛い反応だ。
その美しい白い喉をこの爪で裂きたい…
『ねぇ…悪魔さん…』
血にまみれる女の妄想に恍惚の笑みを浮かべていたが…
『はい…』
私は目の前にいる現実を見つめ返した。
『願いを叶える事…できる?』
驚きで目を閉じれないのではない。その瞳は私を見据えていた。
『ええ…出来ますよ…その変わりに貴方が死んだあとその魂をいただきます…』
思ってもないありがたい申し出。
女を快楽に導かなくても真っ白なままで私の物になる。
『貴方の名は…?』
零れる笑みを堪え冷静を装う。
『私の名は可愛…』
可愛…美しい名だ。
『可愛、貴方の願いは何ですか?私は何でも叶えて差し上げますよ?』
頬に手を当てその瞳を見つめる
『ありがとう…じゃあ、明日…この場所に来てもらえる?』
目線を逸らさず手を払う
『明日ですか?』
『そう…明日のこの時間』
悪魔との契約に迷いがあるのか?
まだ願い事を決めかねてるのか?
今ではなく明日を指定してきた
『畏まりました、それでは明日ここに伺います』
明日来ないかもしれないな…それならそれでいい。あらゆる手段を使い可愛を落とそう…。
それでは…と言わんがばかりに
ロープに手を掛け器用に登っていくが途中一度だけこちらを振り向き、
『明日…約束よ』
と微笑む。
美しい人だ…
『明日…約束です』
届かぬ声を胸でつぶやいた。
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