長編 悪魔の万華鏡

□万華鏡
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ソファに腰掛け娘は出された紅茶を飲んでいた。
『…貴方のお名前は…?』
『私は可愛と申します』
『わかりました。可愛。
貴方はどうしてここへ?』
『………』
『貴方と私は何処かで会いましたか…?失礼ですが覚えておりません…』
『………』
可愛は自分の名前を名乗った後は何も話さない。
カップの中のお茶に目を落とし、何か思い出そうとしているようだ
『質問を変えます。
可愛は…人間のようですが…何処から来ましたか?』
『はい……思い出せないんです…気がついたらここに…』
嘘をついている様には見えなかった。
その後も幾つかの質問をしたが、可愛は答えられず思い出せないと頭を横にふる。私は頭をポリポリとかきため息をついた。
私の名前をなぜ知っているかも分からない…分からないとしか答えられないのだから。
沈黙がつづく。
この美しい娘は何者だろうか…
可愛はしばらく下を向き座っていたが私の座る膝の上に腰掛け唐突にキスをした。
突然の事に驚いたがゆっくりと微笑み可愛を抱きしめた。
『…随分と積極的ですね…』
私はその唇を拒む事なく自ら深くキスを返した。私の手が可愛の腰に周りキスの続きをしようとしたが…手を止めた。

『続きを楽しみたいのは山々ですが…今日はこの後仕事がまだありまして、可愛には部屋を用意しますのでそこでお休み下さい』
私は可愛の体を引は離し可愛の服を整え、名残惜しそうに一礼し部屋を後にした。
初対面の相手にいきなりキスをされ、戸惑いと疑心に囚われるのは当たり前の事だ。
もしかしたら敵の送り込んだ美人局の可能性も…
私が日本支部長である事にいい思いを持ってない者も多くいる。
しかしあんな美女に欺かれるならそれも又わるくないか…など幾つかの考えを頭に巡らせていると笑みがこぼれた。
『楽しくなりそうですね…』
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