短編集 線香花火

□誕生日
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雪が深く降る1月私は生まれた
小さな頃から病弱であまり外で遊ばなかったせいでか私の肌は雪のように白い。

『可愛、お誕生日おめでとうございます』
ベッドの横からするメフィストの声で目覚める
『おはよう…』
メフィストは誕生日を祝うという事を知らなかった。
悪魔である彼の生きる時間は長く自分自身いつ生まれたのか忘れてしまったらしい。
『可愛の生まれた日に感謝致しましょう』
祝い方など知らない…知らなかったメフィストだけど、 彼なりに人間である私の短い生涯を楽しませようとしてくれる
『ありがとう、今起きるね』
メフィストと暮らし始めて何年の時が流れたのだろう…
両親、友達を捨ててどれ位経ったの?
お母さんが私を産んでくれた日…誕生日だけは捨てた過去を思い出してしまう。
何も言わず家を出た私を探し回っただろう。夜も眠れない日々が続いただろう…。
何も言わず消えた私を友達はどう思ってるの…。
メフィストと歩むと決めた時に全てを捨てた、悪魔である彼と一緒にいるには生まれ育ったあの場所を捨てるしかなかなった。悪魔であるメフィストと情を交わす私を狙い低俗な悪魔が寄ってくる。
いつか家族や友達に危害が加わる可能性がある為、私は黙って姿を消した。もしメフィストとの事を親に話せば反対されただろう、友達に話せば夢を見てる妄想だと笑われただろう。
私は一言『今までありがとう』と残しこの世界を後にした。
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