短編集 線香花火

□お菓子の家
1ページ/1ページ

子供の頃童話作家になりたかった
ママが寝る前に読んでくれる物語が大好きだった。
その中でも1番好きだったのはヘンゼルとグレーテル。
怖い話だったけど作中に出てくるお菓子の家にひどく憧れた。

『可愛どこですか?』
綺麗な目を輝かせながらアマイモンが私を探している
『はぁい、今行くから待って』
狭い1Kのマンションなんだから探すほどじゃないと思うけど…そんなところがまたかわいい。
『可愛は僕の目の届く所にいないと駄目です』
アマイモンが部屋に転がりこんできて早半年…。
どうして転がりこんだかというと
悪魔である彼は身分証もないので
住む所を借りれないそうだ。
お兄さんがいるけど一緒に暮らすのは駄目らしい…。
子犬のようなキラキラした目で見つめられたら、よかったらうちで暮らさない?と思わず言ってしまった。
『アマイモン?何食べてるの?』
モグモグ口が動いている
『可愛の写真です』
!!!
写真立てに入れていたアマイモンと撮った写真がない
『写真の可愛を見ていたら可愛くて食べてしまいました』
あっけらかんと恥ずかしげもなくそんな事を言えるなんて…
『アマイモン…写真は食べちゃ駄目だよ。』
怒るに怒れないよ…
『可愛、写真よりやはり本物の方がずっと可愛いです』
立ち上がり私を包むように抱きしめてくれる。
『痛くないですか?』
人間が弱くすぐ壊れてしまう事を彼は学んだ
『すごく心地いいよ』
硝子細工を扱うように優しい手

ここは2人の甘いお菓子の家
子供の頃から憧れた甘い家はとても幸せな空間

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ