短編集 線香花火

□小悪魔
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街はイルミネーションで彩られる
僕らの育った教会が年に一度最も盛り上がる。

『…みんな帰ったかな…』
明かりが消えた教会は月明かりの光で十字架が光っている。
毎度…僕は誰もいない教会でこの日を過ごす。
今年も静かに1人聖なる夜に祈りを捧げる予定だったが…人の気配が、する。
『…だれかいますか…?』
静寂を破る僕の声が響く。
『いるよ…』
十字架の裏から出てきた美しい人
可愛…。

可愛と言葉を交わした事はない。
可愛はメフィストの知り合いらしく理事長室で親密そうに談話しているのを何度か見たことがある。
その姿は美しく…心奪われた。

可愛は僕にとって憧れで高嶺の花のような人だ。
『お1人ですか?』
僕は緊張していた。
『1人じゃない…2人だね』
僕を指差し微笑む。
綺麗な瞳、綺麗な髪、綺麗な唇…
ステンドグラスの光に照らされる美しい可愛。
『…そうですね…』
いつか2人で話せたら可愛を見かける度に心の中で呟いた。
そんな願いは突然に叶った。
『奥村先生だよね?』
首もとの小さなクロスを触りながら目線をこちらへ向けてくる。
叶うなら期待してもいいですか?
聖なる夜よ僕に奇跡を…
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