長編 悪魔の万華鏡

□万華鏡 悪魔の契約
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今よりずっとずっと昔。
まだ私が若かった頃1人の娘と出会った。

『こんにちは。私はメフィストフェレスです。こんな月夜に何をされているのです?』
屋敷の3階からロープを下ろしていた1人の女。
『…だれ…?』
手を止め宙に浮く私を見つめる
『先程名乗りましたが?』
飄々と答える、女はロープを再び下ろしはじめた
『…魔法使い…?それとも悪魔?どちらだっていいから私に構わないで…』
そう言うとスルスルとロープを使い地上に降り立つ。
『後者が正解ですが…』
何気なく楽しい事がないか夜屋敷を出て、この女を見つけた。
月しか明かりのないこの時代に、
夜の商売でもない若い女が夜家を出るなんて事は珍しい。
『悪魔なの…?』
先程まで暗闇の中下を向いていた為よく見えなかった女の顔が月明かりに照らさた。
『…はい…左様で…』
美しい…大きな瞳に長いまつ毛…人形の様な少女。
愛し方など悪魔の私は知らなかった。
今なら分かるこの気持ちの答えも若い私には分からなかった。
この胸の痛み…未熟な私は恋と分からず…
この美しい少女を真っ赤な海に沈めたい…
ただそう思った。

ずっとずっと昔、私はただの悪魔でした。
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