osomatsu

□嫌いだった君
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放課後に残って勉強しようと準備していると、前の席に松野がどかっと座る。



「また来たの」
「また勉強⁉︎すっげー!!」



勉強するから是非とも帰って欲しいのだが、帰る気配は無い。気にするのも無駄かと思って勉強を始めると意外な事に黙って私の手元を見詰めていた。



「…随分静かだね」
「皆帰ったからね!!」
「いや、松野が」
「だって名無しさんちゃん一生懸命勉強してるし!」
「なら帰れば」
「一緒に帰ろうよ!!」



全く何なんだ此奴は。めんどくさいのに絡まれたなぁ。



「名無しさんちゃんって何時も全然笑わないよね!」
「…え?」
「俺けっこー皆の事見てるよ!!俺の事見て笑ったりする人多いけど、名無しさんちゃんが笑ってんの見た事ない!!」



いや、友達と居る時は愛想笑いしてるし。ていうか笑い者にされてるだけじゃん。なのに何で何とも無い様に振る舞うの。



「…友達と居る時は笑ってるよ」
「笑ってないよ!全然笑ってない、笑顔を貼り付けてるだけ」
「!…関係なくない?むかつく」
「俺は皆に笑って欲しいよ!だから名無しさんちゃんにどうしたら笑って貰えるか聞きたい!!」



本人は何なの。さっきから勉強どころじゃないし。でも、思ってたのと違った。思ってたより、真っ直ぐだ。思ってたより、色々考えてる。思ってたより、優しいんだ。
彼の言葉を無視して勉強を再開する。何も言わずにまた私の手元を見詰めてくる。



「……松野って勉強出来んの?」
「十四松‼︎」
「………十四松」
「勉強出来るよ!!天才だから!」
「じゃあこれ分かる?」
「んー…わっかんねー!!」
「ぷっ……何処が天才なの」
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