The world that was tied up

□いらないもの
1ページ/3ページ

髪が綺麗、目が綺麗、顔が綺麗、綺麗、綺麗、綺麗、綺麗
だがしかし、生まれた時から綺麗と言われ続けた彼女は、唯一サイコパス色相が濁っていた。

「少し濁っているけれど、ストレスケアを欠かさずにやればすぐに元に戻るわ」

言われた通りにストレスケアを受け続けた。
しかし彼女の色相だけは綺麗になることを知らず、とうとう濁り切ってしまった。
そんな彼女を世界は受け入れず、彼女の居場所はどんどん無くなっていった。

「とても綺麗だね」

久しぶりに聞いたそのセリフに、大した反応を示すこともなく、ただただ自分の濁り切った色相を見詰める。

「君のその真っ黒な色相も…とても綺麗だね」

「え…?」

初めて、生まれて初めて私の色相を綺麗だと言った人間の顔を一目見ようと俯いていた顔を勢い良く上げる。

「どうだろう、僕の所へ来ないかい?君のその色相じゃまともに暮らせないだろう」

この人は何を言っているんだろう。こんな醜い私に。

「僕は藤間 幸三郎、教師をしていてね。綺麗なものが好きなんだ」

目の前の男は淡々と語り出す。
一体何なんだろうと思いつつも、彼への興味が湧いてくる。
どうせもう誰にも必要とされていないのだから、この人の元へ行ってみるのもありだろうという考えが頭に浮かぶ。

「…名無しさん、です」

名前を囁くような小さい声で言って立ち上がる。
聞こえるか聞こえないかギリギリくらいのその声を彼は聞き逃さなかった。

「名無しさん、行こうか」

出会ったばかりの2人は、闇の中へ消えて行った。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ