osomatsu
□好きじゃダメ?
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「チョロ松先生、おはよー!」
自転車に乗りながら一人の教師の前を横切る。顔を見る暇は無かったが、声だけで誰なのかを認識する。
「全く・・・何回遅刻する気だよ・・」
「だって遅刻しなかったらこうやってチョロ松先生と喋ったり出来ないんだもん」
「はやっ!?」
駐輪場に自転車を置き先生の元へ駆け付ける。案の定、先生は毎度遅刻してくる生徒に呆れていた。
「同じ学校内に居るんだから、わざわざ遅刻しなくたって会えるよ・・・」
本当に何時になったら遅刻しない様になるんだ。何て考え溜め息をついているにも関わらず隣に居る彼女はとても嬉しそうににこにこしている。
「じゃあチョロ松先生、授業行ってくるね」
「寝たら駄目だからね」
「分かってるよ!」
そう言って走る彼女の背中を見送ってから、僕も校舎に向かった。
今日も朝からチョロ松先生とお話し出来た。毎日の事だが嬉しくて仕方がない。先生は私に遅刻してほしくないみたいだけど、当分遅刻をやめる気は無い。
「・・・授業つまんないなぁ」
授業何かよりチョロ松先生とお話ししたい。先生は何時も私の話を聞いてくれて、頑張ったら褒めてくれる。最初は良い先生くらいにしか思ってなかったけど、今は好き。先生と生徒じゃなくて、男と女として。でもこんなにアピールしてるのに、多分先生は私の気持ちに気付いていない。まぁ生徒が先生に恋する事自体可笑しいのかもしれないけど。
授業が終わって放課後になると急いでチョロ松先生の元へ向かう。
「チョロ松先生!」
「廊下は走るなって言っただろ」
「チョロ松先生に会いたくて我慢出来なかった」
私がしょんぼりとした表情でそう告げれば、仕方ないなって頭をぽんぽんしてくれる。チョロ松先生の手おっきいな。安心するな。とか思って頭の上に置かれた先生の手をぎゅっと握る。
「な、何して・・・」
こんな事今迄した事無いから、チョロ松先生は目を丸くして顔を覗き込んでくる。先生の目をじっと見つめ返すと少し恥ずかしそうに顔を逸らされた。
「今日は何か変だよ、何かあった?」
「・・・チョロ松先生」
言いたくて言いたくて堪らないこの気持ち。先生、ちゃんと聞いてくれるかな。ちゃんと伝わるかな。ドキドキして勝手に口が動いた。
「チョロ松先生が、好きだよ」
「・・・え?」
「チョロ松先生が好きなの・・・好きでどうしたら良いか分からない」
先生はぽかーんと間抜けな表情。やっぱり生徒にこんな事言われても困るかな、と今更になって不安が込み上げてくる。もしこれでチョロ松先生に嫌われたらもう話せなくなっちゃうかな。言うんじゃなかったかな。頭の中ぐるぐる不安でいっぱいになって涙がぽろぽろと出てくる。
「御免なさい・・・忘れて」
「・・・まだ何も言ってないのに何で泣いてるのさ」
「え、先生・・・?」
バッと顔を上げれば先生の赤い顔。私の涙を指で掬って熱い視線を向けられる。どんどん期待が募っていく自分。
「・・・最初はこんな気持ち間違ってると思ったけど・・・・・僕も名無しさんと同じ気持ちだよ」
「!せんせっ・・・」
チョロ松先生と同じ気持ちだった事が嬉しくてまた泣き出しそうになる私を優しく抱き締めてくれる先生の腕は凄く安心した。