鋼鉄の体

□生まれ変わっても
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「お疲れ、オライオン。」

オプティックを焼くように青く発光するモニターから目を離し、赤と青の大きな機体は振り返る。

「ああ、名無しさん、お疲れ様。」

オライオンよりも頭二つ分ほど小さい、澄んだネイビーのウーマンタイプが携帯型エネルゴンを持って壁にもたれていた。

「それ、もう少しかかりそう?」

名無しさんからモニターに視線を戻してすぐ終わる、と返事をする。

「じゃあ待ってる。」

名無しさんはそのままの姿勢で携帯型エネルゴンをちまちまかじりながら腕を組んだ。

名無しさんはオライオンと同じ情報収集員であり、友人以上恋人未満の関係である。

いつもこうして休憩時間は2人で話し、帰りもどちらかが終わるまで待ち、ゆっくりと帰路につくのだ。

「そういえば、聞いたよオライオン。ケイオンに行くんだって?」
「メガトロナスという剣闘士に会いに行こうと思うんだ。」

オライオンは前々から彼に会いに行きたいと名無しさんに相談していた。
名無しさんはオライオンが政治に疑心と不満を抱いていることいつからか気付いており、メガトロナスという剣闘士が改革を訴えている事も知っていた。
オライオンは自分のしたい事や主張をあまり周りに見せない。が、メガトロナスについては別だった。
そんなオライオンは珍しいし、名無しさんもそんな彼を応援していたいのだ。

「行っておいで。私は時間を作れないけど、オライオンのしたい事は応援してるから。」

「君はいつも私の背中を押してくれる。ありがとう名無しさん。」



同じ体勢で何時間もじっとしていた所為か、凝り固まっていたらしい関節がバキバキと音を立てる。

「あ〜〜…」

大きく背伸びをして、すぐオライオンのいるモニタールームに向かった。


「オライオン〜、」

モニタールームのドアを開けるといつもの青い光は無く真っ暗だった。

名無しさんは、はたと思い出す。
「…今日はケイオンに行ってるんだった。」

ドアから差し込む光でデスクに見慣れない紙と携帯用エネルゴンが置いてあるのが見え、思わず手に取った。

紙を開くと名無しさんへのメッセージが書かれていた。

私が居ないことを忘れて、君がここに立ち寄るのは目に見えて分かっているんだ。少し寂しい思いをさせてしまっているのかもしれない…なんて思い込んでもいいかな。

「うわ〜 やられた、」

頬がカッと熱くなって排気の熱もどこか熱くなった。

オライオンに、今ので寂しくなくなったよってメッセージを今すぐ飛ばしたくなった。でも、きっと今も忙しいんだろうなあ。
口の端がにんまりと上がってしまうのを堪えて紙を大事に仕舞い込み、エネルゴンを持ってモニタールームから帰った。



オライオンがケイオンから帰ってきた。
剣闘士のメガトロナスは彼の想像を超えた存在であったらしい。
メガトロナスの色んな話を興奮気味に話してくれた。


また彼に会うためにケイオンに行くらしい。

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