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□交錯しない視線
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いつだって貴方は、真っ先に俺を呼ぶ。
部活の時も、学校の時も、休日の時も。同じ学年に他の先輩方も居るのに、貴方は何故か決まって俺を呼ぶ。


『赤葦ィー!!』


その声が、コートでも俺を呼ぶ。
正確に言えば「俺のトス」を呼ぶんだけど。
あの腕が、スパイクを敵のコートに叩き落とした瞬間。
着地した後後ろを振り、チームメイト達に見せる満面の笑顔。
試合に勝った後、肩を抱いて嬉しそうにしているその表情。

『ありがとな!』

そう言って俺の頭を撫でるその手、その声。

全てに心を揺さぶられる。
この気持ちは、きっと自覚してはいけないものだったんだ。
俺はただの後輩が、頼れる先輩に向けるとは別の。
熱い熱を孕んだ目で貴方を見てしまっているのだ。
知られてはいけない。
この気持ちは、この視線には。
決して気付かれてはいけない。
きっと気付いてしまえば、今までの関係ではいられなくなるの目に見える。
貴方に嫌われるのだけは、絶対に嫌だ。

でも、この気持ちを殺す事なんて出来なくて。
だから今日も、この目は貴方を追ってしまうんだ。
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