書物2

□交差する想い
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アテンション!

・読切版の月→日影
・読切版の口調など掴めてない上に捏造
・連載版の日←月←山
・好きな歌の歌詞引用過多
(私は語彙が少なく言葉のセンスがないため…そして歌詞が好きすぎて)
・バレーしてない

など、なんでも大丈夫な方向けです



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好きなことを好きと言えていたら、もし先に伝えていたら、今日は違う”今日”になっていたかもしれない。



……なんて、不毛なことを柄にもなく考えた。それほどまで僕はあいつが好きだったらしい。
あいつの作り出す表情、動き回る姿、発せられる言動、全てが愛おしく思っているのに、らしいだなんて自分ながら白々しくて笑えた。

「あいつら分かりやすすぎだろ……」

田中が僕の目線の先にいる二人を見て呟いた。
そこにはネットを片付ける黒髪とオレンジ髪の一年二人の姿。
動きが不自然でギクシャクという言葉を体で表していた。その不自然の原因は、黒髪の一年影山飛雄による部活内公開告白にある。相手はオレンジ髪の一年、日向翔陽。
僕の……好きな相手。


約1ヶ月前のこと。
その電撃告白が起こったのは、ごく普通の部活終わりの部室でのことだった。

「好きだ」

着替え途中で上半身裸の日向にまだTシャツ姿の影山は顔を赤くして言っていた。
騒がしかった部室内が静まる。それに反し、僕の頭の中は騒がしくなった。
影山の気持ちを僕は知っていた。けれど言わないと……いや、言えないと思っていたんだ。バレーバカで恋愛ごとに疎い影山は自分の気持ちに気がつくことはないだろうと。
甘かった。影山が言わないと過剰な自身を持ってしまっていた……
自分の気持ちに気づいた瞬間、ど直球な影山が言わない訳がない。頭で考える奴ではないんだから。
それにしても早すぎだろ!

と、部室内の沈黙が影山の声により破られた。

「好きだ」

「い、いやいやいやいや!」

我に帰った日向は一歩下がり、影山から距離を置いた。しかし、影山は追うように距離を詰める。

「おれ男!わかってる⁉」

「当たり前だろ」

影山は何言ってるんだコイツと首をかしげ、日向は何を言ってるんだコイツと顔を真っ青にして震えた。
まあ、日向の反応は正しい。普通同性に告白などされれば動揺するし、拒否反応も出るだろう。
僕が言えなかったのは、その反応を見るのが怖かったから。なのに影山ときたら考えもせず言ってしまった。

「え、まじ?」

「まじ」

「え、えぇ…………」

「別に今すぐ答えてほしいわけじゃない。俺も今自覚したばっかだし。でも俺が好きだってことは覚えとけ」

あの真っ赤だった顔はどこへやら。すっきりした表情をし、通常通り上からものをいう態度に戻っていた。
日向も混乱しているのか「おう……」と言って着替えを再開する。
周りで見ていた僕たちも無言で着替え、無言で部室を出た。こんな静かな部室は初めてだった。

そして影山からの猛アピールで日向はあれよあれよと絆され、つい先日正式に付き合い始めたそうだ。
そして今日に至る。
視線の先の二人はネットの両端を持ち、半分に折ってその両端を持ってまた半分に、を繰り返す二人の手が触れ合う。すると二人してものすごい勢いで両手をバンザイした。

「影山が積極的だったの嘘みてぇ」

と田中は笑う。
僕は笑えなかった。
イライラする。
あっさり気持ちを伝えた影山に。
それに簡単に絆された日向に。
そして、なんの行動も起こさずにモヤモヤとした気持ちを抱え込んだ自分に。



こんな思い早く忘れてしまいたい。
二人も見たくない。情けないよね、自分で自分の気持ちから逃げたくせにさ。



家に着いた僕は夕飯は食べずお風呂にも入らず、着替えだけ済ましてベットに潜り込んだ。僕は全てを遮断すべく目を閉じた。

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