書物
□最期まで、ずっと
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塩/の/街という本のパロディです。これパロディになってる?って感じですが…
死ネタです。
原作読んだことある方にはたぶん、なんだこれです…読んだことない方、ぜひ読んで欲しいです一章だけでも!
それでは、なんでもOKな方のみどうぞ
「ねーツッキー。今宮城に着いたよ」
山口は誰もいない空間に、まるでそこに月島がいるかのように話す。
しかし、そんな山口を見る人はいない。今この場に人などいないのだから。あるとしたら、古びた建物に乗り捨てられた車。そして多くの白い柱だけだった。
山口は大きな荷物を背負い直し、タコの潰れた足で一歩一歩進み始める。が、気持ちに体は追いついてはくれなかった。
足から力が抜け、その場に膝と手をつく。
丸二日歩き通しで、お腹も空いたし喉も乾いた。
立たなきゃ……そう思った山口の意識はそこで途絶えた。
日本では今、想像もできない怪奇現象が起こっていた。
それは人が塩の塊となること、街に溢れる白い柱はまさにそれだ。今では塩害と言われている。
今から数ヶ月前、熱を出して家にいた山口はテレビでその存在を知った。
テレビでは、まだ関係性は分かってはいないが、白い隕石の落下とほぼ同時に人が塩の塊になってしまったと報道されている。
親の無事は携帯の着信で知るこのができた。
そして山口はテレビ画面に映る全身真っ白な人間を見て、慌てて月島に電話をかけた。もし月島も、テレビに写る人たちと同じ姿になっていたら……
「ツッキー……!」
繋がって、繋がって!
3コール目、「もしもし?」と月島の声がして安堵したのを山口は覚えている。
「よかったぁ……ツッキー……」
「おーい!起きろ!」
気を失っていた山口を起こしたのは、大きな揺れと声だった。
「ん……」
目を開けた先にいたのはオレンジ色の髪をした少年。
「死んでんのかと思ったじゃんか!」
「ご、ごめん?」
何故か山口は少年に謝る。と同時にお腹が鳴る。
「腹減ってんの?」
「う、うん。二日前から何も食べてなくて……」
「そうなのか⁉︎俺なら絶対耐えられない」
少年は信じられないと、目を大きく見開き山口を見る。そして思い出したように肩掛けから肉まんを出した。
それを山口に差し出す。くれるということなのだろう。山口はこんなご時世で自分より年下から食べものを貰うなんて……と躊躇したが、背に腹は変えられなかった。
「ありがとう」
肉まんはあっという間に山口の胃の中に収まった。
この冷めた肉まんは今まで食べてきた中で一番美味しいと思った。
「なんでこんなとこに行き倒れてたんだ?」
食料貰いに?と少年は聞いてくる。
「ううん。行きたいところがあってさ」
「行きたいところ?」
「うん。川に行きたいんだ」
「川?その辺にあるじゃん」
「宮城の川が良かったんだよ。それにホタルがいるくらい綺麗な川がいいんだ」
不思議そうに言う少年に山口は笑って答えた。
山口の言葉を聞いた、少年は考え込む素振りを見せたかと思うと、
「とりあえず俺の家来いよ!ご飯少しなら出せるしさ」
「いや、でも……」
「遠慮すんなって!」
と、少年に促されるまま、山口は着いていった。
道中「家には怖い奴いるけど大丈夫だから!」なんて爆弾を少年は落とした。
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