書物
□クリスマス2014
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クリスマスは今年もやってくる。
そのフレーズの曲が流れると、毎年クリスマスだ!って気持ちにはなるけれど……
「チキンはいいとしても、ポテトは絶対ワック!ケン○ッキーのポテトは嫌」
「なんで。僕、ケン◯ッキーのポテトの方が好きなんだけど」
芋々しくて。
俺はツッキーが言うなら……と一瞬言葉を飲み込もうとする。が、やはりふにゃふにゃポテト好きには譲れないものがある。
「だ、ダメ!あれはふにゃふにゃにならずに、ただパサパサになるだけでしょ?」
俺はふにゃふにゃポテトが食べたいの!ちなみにツッキーの食べ残したやつ。ここ大事。
「そんなことだろうと思った」
呆れた風にツッキーが笑った。
ツッキーと過ごす、何回目かのクリスマス。高校までは毎年家族ぐるみでクリスマス会をしていた。けど今年は二人きり。
「あとでワック寄ろう」
「ありがと、ツッキー!」
俺とツッキーは街に溢れたカップルの間をすり抜けていく。きっと端から見たら、俺たちはカップルには見えないだろうな。
そう考えながらワックへの近道である路地裏に入ったとき、
「山口」
ツッキーが右手を差し出してくる。なんだろう?
「ケーキ?」
と、さっき買ったばかりのケーキの入った袋を渡す。
「バカなの」
「ごめん、ツッキー?」
反射で謝るけれど、差し出された手の意図が全くわからない。
ツッキーはケーキを左手に持ち替えると、右手が俺の左手を掴んだ。
「こうでしょ?」
これは……恋人繋、ぎ⁉︎
「つ、ツッキー?こここここ外だよ!」
「分かってるよ。うるさい、山口」
「ごめんツッキー!」
「この路地裏抜けたら離すから」
俺はそれ以上何も言わずにツッキーの横を歩く。ツッキーの耳は寒さのせいか赤くなっていた。
「今日は特別」
「うん」
「ニヤニヤしないでよ」
「無理〜」
普段でも手なんて繋がないのに、外で手を繋げるなんて!
「今日はすごく良いクリスマスだよ」
「これだけで?」
「ツッキーといるだけで!」
欲のない奴……なんてツッキーは言うけど、ツッキーと一緒にいたいっていうのは結構欲深いと思うんだ。
「……来年も再来年も、ずっと一緒にいてあげる」
「ツッキ〜」
「うるさい」
「ごめーん」
プロポーズみたいだと気がついて、俺の頭がショートするまであと少し。
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