書物

□山口忠生誕祭2014
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山口忠の誕生日まであと2日。



《離別》

俺は高校を卒業してから、大学へ進学した。
何かしたいとか目標や夢があったわけじゃない。ただ俺が入れる一番偏差値の高い大学を受験しただけ。
ツッキーはというと、影山と日向と共にプロのバレーボール選手となった。三人も同じ高校からスカウトされるなんて今までにないのではないだろうか。
最初はあの三人なら当たり前だとか、やっぱりツッキーはすごいやとか思ってた。

でも俺が大学3年になり、”就職”という二文字がリアルに示されたとき、俺は真っ直ぐにツッキーたちを見れなくなった。
上を目指すツッキーたち、何もない俺。
高校の時、一年で俺だけが試合に出られなかったときと同じ気持ちだ。でも、あのときは”みんなと同じコートに立ちたい”という目標があったから頑張れた。目標のない今とは違う。
三人が、ツッキーがとても遠くに感じて、寂しくて辛くて……

「別れよう」

弱虫な俺は自分から幸せを捨てる。

「は?」

「別れたいんだ」

「何、突然……もしかして、この前約束の時間に間に合わなかったこと怒ってるの」

呆れてため息をつくツッキーに首を振る。するとツッキーの眉間にシワがよった。

「じゃあ何?はっきり言ってよ。こっちは遠征帰りで疲れてるんだから」

「…………じゃあ、来なきゃいいじゃん。俺のとこじゃなく、一緒にいて疲れない人のとこに行けば?」

こんなこと思ってないのに。

「ツッキーといると気ぃ遣って疲れるし、めんどくさい」

ごめん、ツッキー。でももう一緒に居たくないんだ。このまま一緒にいたらツッキーをもっと傷つける。
自分を卑下して、不安で簡単に押しつぶさる俺より、ツッキーを支えてくれる強い人を見つけて。



その日を境にツッキーとは一切会うことも連絡さえも取らなくなった。最初はツッキーからメールや電話もあったけど、徐々に減っていきそして一年経った今、一通もこなくなっていた。



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