わーとり
□ふわり
1ページ/2ページ
大学を終えて本部のボーダー基地へと向かっていると、見慣れた姿が何やらぴょんぴょんと跳ねているのが見える。
近付きながら様子を伺ってみれば、同じくボーダー隊員のごんべさんは何やら木の上を目掛けて手を伸ばしている様子だった。
その動作に必死なのか、傍まで近付いた俺の存在には気付いていない。
「よう、ごんべさん」
俺が声を掛けてみれば、少しだけ驚いたようにこちらを振り返る。
そんな驚いた顔も俺を認識すると人懐こい笑顔に変わった。
「あ、諏訪さん!これから本部ですか?」
ごんべさんの言葉に俺は相槌を打ち、先ほどまでごんべさんが見上げていた木の上を見上げた。
するとそこには小さくて真っ白な子猫がいる。
なるほどと納得しごんべさんを見れば、困ったように眉を下げた。
「あそこの子猫、降りられなくなっちゃったんです。助けたいんですけどどうしても届かなくて……」
俺は今一度木を見上げた。
ジャンプすれば枝には届きそうだが、子猫を救出するには少し高過ぎる。
ごんべさんの身長ではとてもじゃないが届かないだろう。
しかし何か違和感を覚える。
「……お前トリオン体では縦横無尽にぴょんぴょん跳んでるのに届かねぇのな」
任務やランク戦の時に見かける姿とのギャップに笑えば、目の前の小さな女子は悔しそうに頬を膨らませる。
そういうところが余計にギャップを感じさせる、とは思ったが言わないことにしておく。
「助けてあげたいのは山々だけどよ、さすがに俺でも厳しいぞ」
「そうですか……どうしよう」
もとより小さな背中は、しょんぼりと項垂れることでより小さく見えた。
どうにかしてやりたい、そう思った頃には口が開いていた。
「俺が肩車してやるから。ごんべさんが子猫を助けてやれよ」
俺の言葉一つで、先程からは考えられないような眩しい笑顔になる様は少しだけ心が躍った。
→