そるきゃ

□恋する5秒前
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「あ、あれ……」



ボクが練習をするために教室へ入ると、そこには一人の女子生徒がいた。

1年生の教室の中の一つの机に突っ伏したまま動かない。

恐らく眠っているのだろう。



「起こすわけにもいかないし」



残念ながら他の教室はすでに他のパートが使っている。

他のパートの個人・パート練に混ざるわけにはいかないしどうしたものか。

まだボクのパートの1年生たちは来る様子がなかったので、とりあえず近くの席に腰かけて待ってみることにした。

きっと、他のパートの練習している音を聞けば自然と目を覚ますだろう。



「…………」



そう思っていたが、なかなか目を覚ます様子は見られない。

それどころか、ぴくりとも動いていないような気がする。



「……ま、まさか、そんな、ね」



ボクは楽器を机の上に置き、恐る恐る女子に近づく。

突っ伏した彼女の腕の下からは恐らく友人からもらったと思われる手紙が置いてあった。



「……ごんべさん?」



それが彼女の名前だろうか。

ああ、全然関係ない人間に勝手に名前なんか知られたら気持ち悪いよね。

ボクって最低だな。

一人自己嫌悪を始めていると、ようやく彼女はぴくりと体を動かした。



「ん…………」



緩慢な動作で起き上がり、大きく伸びをする。

伸びを終えると、口を手のひらで覆って大きな欠伸を漏らした。

そこでようやく、ボクと目が合った。











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