しょーと
□君と僕
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高校三年の秋、僕、高科陸は非常階段からグラウンドを見つめていた。
「あー、さっむ」
目線の先には想い人。
ひとつ年下の幼なじみ、白坂翔太。
白と黒のボールを楽しそうに追いかける。
彼はサッカー部だ。
「たのしそー」
僕が進路に向けて考える前なんて、こんな風に眺めるだけじゃなくて、隣で笑いあってた。
でも、追い込みに入ったとたん、その空気は消えた。
「好きなのになー」
いつのまにかグラウンドからはサッカー部の姿が消え、夕方も暮れにかかっている。
「帰ろ…」
こう一人でいるとどうしても独り言が増えていく。
ばたばたばたっーーー
非常階段をしたから駆け上がってくる音が聞こえて、この音が誰かわかってしまう。
「陸にぃ!」
満面の笑みで俺に声をかけて、抱きついてくる。
「暑いわ!!」
「見ててくれた?」
「あー、見てた見てた…」
「ほんとにー?」
こいつのコロコロと表情が変わるのが好きだ。