しょーと
□キセキ
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俺の恋人だった結城は一年前の今日、この部屋を出ていった。
「…もう会いたくない」
その言葉だけを残して…。
結城とは、高校の頃からの付き合いで、告白したのは僕からだった。
『好き、なんだ…』
『…俺も』
ハニカミながら僕に応えてくれた結城を、その時一生懸けて守りたいと思った。
大学に入ってからは、一緒に住みながら幸せな毎日を送っていた。
僕が、一度だけ間違いをしたりしなければ…。
結城がサークルの合宿で1週間不在のとき、僕は昔の友だちと寝た。
魔が差した…なんて、ただの言い訳にしかならない。
その時は結城からの連絡がなく、寂しかったんだ…。
2日後に結城が戻ってきたときは後悔しかなかったが、ばれないと思ってた。でも…
「佐倉…」
「んー?」
ソファに二人でかけていると、僕の首筋に結城の手がのびた。
「この跡…なに…?」
「えっ…」
バッ、と手で押さえて、近くにあった鏡で確認すると、くっきりと赤い跡があった。それはあの一夜の残りで…。
「浮気したの…?」
「あ、いや、、、」
「したんだ…」
「…」
なにも言えず俯くと、
結城が立ち上がり、寝室へ行った。
しばらくして出てきた手には、ボストンバッグがあって、その手を慌てて引き留めた。
「触んなっ!!」
「結城…」
「…もう会いたくない」
僕はもう追いかけることもできず、
扉が閉まるのをただ見てるしかなかった。