しょーと

□キセキ
2ページ/6ページ


俺の恋人だった結城は一年前の今日、この部屋を出ていった。

「…もう会いたくない」

その言葉だけを残して…。




結城とは、高校の頃からの付き合いで、告白したのは僕からだった。

『好き、なんだ…』


『…俺も』

ハニカミながら僕に応えてくれた結城を、その時一生懸けて守りたいと思った。


大学に入ってからは、一緒に住みながら幸せな毎日を送っていた。


僕が、一度だけ間違いをしたりしなければ…。



結城がサークルの合宿で1週間不在のとき、僕は昔の友だちと寝た。

魔が差した…なんて、ただの言い訳にしかならない。

その時は結城からの連絡がなく、寂しかったんだ…。

2日後に結城が戻ってきたときは後悔しかなかったが、ばれないと思ってた。でも…


「佐倉…」

「んー?」

ソファに二人でかけていると、僕の首筋に結城の手がのびた。

「この跡…なに…?」

「えっ…」

バッ、と手で押さえて、近くにあった鏡で確認すると、くっきりと赤い跡があった。それはあの一夜の残りで…。

「浮気したの…?」

「あ、いや、、、」

「したんだ…」

「…」

なにも言えず俯くと、
結城が立ち上がり、寝室へ行った。

しばらくして出てきた手には、ボストンバッグがあって、その手を慌てて引き留めた。


「触んなっ!!」

「結城…」

「…もう会いたくない」


僕はもう追いかけることもできず、
扉が閉まるのをただ見てるしかなかった。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ