しょーと

□はじめまして
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柳井さんは、それからずっと俺の横に座っていた。

「戻られなくて…いいんですか?」

さすがに気になって声をかけると、

「んーー…」

俺の顔を見たまま返事をくれない。

「あの、」

「ねぇ、二人でどっか行かない?」

「え…」

「そうだ!行こっ!!」

何て言って自分の荷物をとりに柳井さんは席に戻っていった。
回りの人に声をかけている様子をみたら、まとめ役なんだということがよくわかった。


「直也くん、」

「はい」

急にママが真顔で声をかけてきた。

「あのね、柳井くんなんだけど、、、気を付けてね…」

「は…?」

「彼、バイだから…」

バイダカラ…?

バイだから…

バイだから!?

「ちょっ…ママ…、えっ」

言葉の理解ができた瞬間に、俺はカウンターのスツールから飛び降りた。

「いい人なんだけど、そうなのよ」

ママにあれこれ聞こうとしたら柳井さんが隣に戻ってきた。

「ママ、あんまりいっちゃダメだよ」

シーっ、と人差し指を口許に当ててウィンクしている姿がとても様になって…

「じゃあ、行こっ」

手をとられ、出ようとしたときに、お会計をしていなかったことに気づいた。

「あ、お会計…」

「終わってるから」

と、前に進み始める。

「そんなっ…」

「その代わり、今日、付き合ってね」

柳井さんはまたウィンクして、近くに停車していたタクシーに乗り込む。

「ほら、おいで」

俺は差し出された手を掴んで、タクシーに乗り込んだ。
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