るろうに剣心 剣×薫

□愛おしい人 上
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まだ寒さが残る3月ー

太陽の日差しはだいぶ春を感じさせるものの、時折吹く風はまだ冬の冷たさを残す

そんな中、神谷道場では朝から薫がひたすら素振りを続けていた
汗だくになる彼女の姿は真夏を思わせるほど

「いい加減、やめろよな…薫」

ヒュッ…ヒュッ…ヒュッ…


薫は弥彦の制止を聞き入れず、ただ前を見据えて腕を振る

「はぁ…駄目だこりゃ…。俺、赤べこの時間だからそろそろ行くぞ!…ぶっ倒れても知らないからな!」

弥彦は最後にもう一度 薫に宣告すると道場を後にした


ここ1週間、薫は時間があれば道場に向かい素振りを繰り返していた

ひたすら素振りを繰り返す理由

それは剣心が警察の依頼で家を空けて1ヶ月
大坂に向かった彼から連絡は1度もない
無事なのか…
仕事が難航してるのか…
帰りはいつなのか…

今回は場所が場所だけに、帰りが遅いということは剣心から言われていた

だから3週間くらいは普段と変わらず元気に過ごしていたと思う

しかし、さすがに4週目を迎えると日に日に不安が募り始めた
薫はそれを切り捨てるように、余計な事を考えないように、空いてる時間はひたすら素振りに集中した

弥彦は剣心から一つ頼まれ事をされていた
それは、剣心が留守の間 出来るだけ道場に寝泊まりすること

剣心に「一つ頼まれて欲しい」と言われた時、弥彦は大方そんな事だろうと推測していた
剣心からの頼まれ事に二つ返事をした弥彦は、言われた通り毎日 道場に寝泊まりしている


そしてここ1週間、見るたびに素振りをしている薫
さすがの弥彦も心配になり、昨日は警察署へ行き剣心達の仕事の現状を聞きに行った
しかし、大坂からの連絡は警察署にも来てないらしい

いくら弥彦が薫に言っても彼女は聞き入れない
変な所で薫が頑固なのは、弥彦も重々承知している為 半分は諦めている

ただ、本当に倒れられたら非常に困る
稽古や出稽古もそうだが、何より剣心からの頼まれ事
道場に寝泊まりするように…
つまり「薫を頼む」ということ

そんな頼まれ事をされては放置も出来ないし、弥彦自身だって純粋に薫が心配である

弥彦はどうしたもんかと頭を悩ませる



そんな弥彦に心配されている薫
彼女は弥彦に心配をかけていると分かってはいた
分かってはいるが、不安に押し潰されそうになる現状に耐える事が出来なかった


夜、布団に入れば余計な事を考えて眠れなくなる
だから身体が限界を迎えるまで素振りをし、倒れこむように眠りにつく

それでも眠りが浅いのかいつもより目覚めが早く、起きてすぐに道場へ向かう

出稽古先の前川道場でも、彼女のいつもと違う気迫に生徒達は戸惑うほど


そんな無茶が長く続く筈もなく、薫はとうとう体調を崩す
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