るろうに剣心 剣×薫

□それはごく自然に
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弥彦が左之助の長屋に移ったのは一週間前

薫は「まだ早い」と反対していたが、1ヶ月も反対され続けた弥彦は痺れを切らし剣心を味方につけた
薫に言っても全く聞く耳をもたない
剣心も反対はしているが、話は聞いてくれる
なら剣心に縋るしかないと、毎日のようにくどくど言い続けた

剣心はすぐに諦めると思っていたが、日が経つにつれ弥彦のしつこさは増すばかり
さすがの剣心もお手上げ状態になり「拙者が無理だと判断したら必ず戻るように」と条件をつけた

ここまで強く願うのだから、弥彦は弥彦なりに成長しようとしてるのだろう
まだ子供ではあるが、同年代の男の子に比べればずっと大人ではある
弥彦の気持ちも分からなくはないと、剣心は薫を説得した


剣心と薫が2人で暮らし始めて一週間
変わった事と言えば、家が静かになったくらいで他は変わらない


弥彦が出て行った初日こそ「剣心と2人きり」と変に意識した薫だったが、一週間経った今ではそれが当たり前の生活になっていた



そんなある日の夜、薫はほつれてしまった剣心の着物を直していた

ついでに、弥彦のボロボロになった道着も手直ししようと自室で針仕事を進めていた


季節は冬で、夜が更けるにつれ部屋の温度は冷え込みを増す
そして思ったより時間がかかり、時計を見れば十時過ぎ…


薫は仕上がった着物を剣心に渡そうと部屋の前まで来たが、時間が時間だけにやっぱり明日にしようとクルリと方向転換する

「…薫殿?」

自室へ戻ろうとした薫が振り向くと、部屋から剣心が出てくる

「あ、ごめんね。こんな時間に…。剣心の着物、届けに来たんだけど時間も遅いし…明日にしようと思って。もしかして起こしちゃった?」

「いや、まだ寝てなかったから大丈夫でござるよ」

「じゃあ…はい、これ。ほつれた部分、縫ったから」

「かたじけない。…それより薫殿、手……」

「え?…手?」

「ずいぶん、冷えてるでござるな…部屋の火鉢は?」

「ああ、途中で消えちゃって」

「風邪ひくでござるよ。とりあえず中に入って身体を暖めるでござる」

剣心は薫を自分の部屋に入れ火鉢の前に座らせた

「暖かい……」

「今日はこの部屋で寝るといい。拙者は隣の部屋を使うから」


そう言って部屋から出て行こうとする剣心の袖を薫は慌てて掴む

「待って!暖まったら自分の部屋で寝るから。これじゃあ剣心が風邪ひいちゃうわ」

「拙者なら大丈夫」

「駄目よ…ほら、戻って」

薫は剣心の腕を引っ張り部屋へと戻そうとするが、剣心はその場から動かない

「…剣心?」

「…薫殿、おやすみ」

剣心は薫に一歩近づき肩に手を添えると、一瞬触れるだけの口付けをした

固まる薫を見て微笑むと、剣心は隣の部屋へ行ってしまった


「………え?」

剣心の部屋に残された薫は思考停止
指で自分の唇をなぞりながら、モソモソと布団に潜り込んだ

しかし、その布団からは剣心の香りがして…
薫は次の日、寝不足になる

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