るろうに剣心 剣×薫

□密偵調査
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ここ数日、寝苦しい夜から解放され
時折ふわりと部屋に舞い込む風はとても心地がいい
庭では鈴虫がリーリーと羽を震わせ秋の訪れを知らせている


そんな夜ー

居間では剣心と薫が食後のお茶を飲み、弥彦は膨れたお腹を摩りながらゴロゴロしている



そんな平和なひとときを過ごす神谷道場に1人の警官隊が訪れた



「夜分遅く申し訳ない。緋村さんと神谷さん…今から私と一緒にある場所に来て頂きたい」

そう言った警官隊は何故か制服ではなく、着物姿であった
怪しむ剣心に警官隊は警察手帳を見せた

そして、時間が無いからと玄関先で取り急ぎ伝えた用件はこうだった

斎藤が至急、剣心と薫を連れて来いと…


「…斎藤が?…何故、薫殿まで」

「詳しい事は向こうで…。とにかく急いで来て欲しい」

「なんだよ!!俺だけ用無しかよっ!」
横で聞いていた弥彦が文句を垂れる

「場所が場所だけに…子供はちょっと」

「どういう事でござるか?」

「…場所は吉原です」

「吉原?……詳しい話を聞かせて頂けないなら薫殿は連れて行けない」

「しかし、今は本当に時間がありません!!お願いします!」


「わかったわ。行きましょう、剣心」

「いや、しかし…」

「弥彦、留守の間 道場をお願い。しっかり戸締りしとくのよ」

「…ったく!つまんねーの!」
ヘソを曲げたままの弥彦はブツブツと文句を言いながらも薫の言いつけを了承した



剣心は納得しないまま、薫を連れ警官隊と共に夜の華やかな街へと足を踏み入れた




遊邸に入ると、色鮮やかな着物に身を包み綺麗に化粧を施した遊女達と廊下ですれ違う
その度に薫は心臓をドキリと鳴らす



普段着の着物を着た薫もまた遊邸では目立っていた
年頃の町娘が遊邸に訪れるなど無い事で、廊下ですれ違う男達は薫をチラチラと見入る

薫もその視線には気づき、気まずさから顔を下に向ける
そして剣心からはぐれぬよう早足で後ろをついていく


案内された部屋には斎藤と10人ばかりの警官隊がいた
斎藤を始め全員、制服ではなく着物を着ている

遊女は1人もおらず部屋の空気は張り詰めていた

「どういう事でござるか?」

剣心は斎藤を睨みつける

「密偵だ」

「それは分かる。……なぜ薫殿まで呼んだ」

「外国からの麻薬や武器の密輸を企てる組織があってな…。2ヶ月前から密偵を進めていたが、ここにきて手詰まり状態だ」

「…………」


「今、この階の1番奥の部屋にその組織が来ている。おそらく密輸計画の話だろう…。神谷の娘にはその部屋へ侵入して計画の話を…「断る」

剣心は斎藤の言葉を遮った

「今回ばかりは協力できぬ」

「時間がないんだ。奴らは近いうちに動き出す。それに今回の計画には裏で動いてる人物がいる。そいつを潰さん限り密輸は繰り返される」

「なら…その組織の部屋にいる遊女にでも頼めばよかろう」

「無理だ…。ここの女が組織と既に繋がってる可能性もある」

「遊女の姿でもない薫殿に、どうやって侵入しろと?」

「ここの太夫に大金はたいて頼んださ…。詳しい事情は言えないが、1人の女を遊女の姿にしてあの部屋への同席を許可してもらった」

「…ふざけるな」

「お前と口論してる時間はないんだ…。おい、神谷薫。やってくれるな?」

「……わかったわ」

「薫殿!」

「大丈夫よ、ただお酌して話を聞いてればいいだけでしょ?」

「そうだ。何かあればこの部屋に駆け込め」
斎藤に言われ薫はコクリと頷く

すると1人の警官隊が太夫を部屋に連れてきた

薫を見ると妖艶な笑みで微笑み、ついて来いと合図する

太夫と共に部屋から出ようとする薫の腕を剣心は掴む
そして薫に「何かあればすぐに逃げるでござるよ」と耳打ちする

「わかったわ」
小さな声で答えた薫は遊女に変わるべく太夫と共に歩いていった
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