Trick because give treat
□ハロウィン・クエスト
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足元にはベッド特有の反発感。
背中には堅い壁。
そして目の前には……
「ねぇ、これって所謂壁ドンだよね。どう?人生初の壁ドン…弟に奪われちゃったね?ふふっ、姉ちゃんの初めて…もらっちゃったー!」
「誤解を招く言い方すんな!」
私の顔のすぐ横に両手を突いた弟。
そう、まあ誰もが少女漫画で一度は見たことのある“壁ドン”ってやつを、弟にやられてる。弟に。
どう?前例ないよね、斬新だよね、こいつ頭おかしいよね。
「もー姉ちゃんってば!心配しないでも姉ちゃんの初めては全て俺が奪ってあげるから安心してね!」
「もうお前、外の仮装パーティー行ってきなよ。お前なら素でいける」
きっとその変態さは誰にも負けないさ。うん。
「ていうか、さっさと退いて。ここ私のベッド」
「…姉ちゃん、今日何日かわかってる?」
「はいはい。ハロウィンだね。だから仮装行ってこいって」
どうせ『お菓子くれなきゃ悪戯するぞ!』とか言うんだろうが。
あいにく弟に悪戯される気はない。
けどお菓子を買うお金もなぁ…
この間悠たちとカラオケ行ったばっかだし……。
あ、これ弟には内緒ね。いくら文化祭の打ち上げで行ったからって…ねえ?
弟の前で悠の名前を出したらどうなるか……。
こればっかりは悪い予感しかしないし。
すると弟はぶんぶんと首を振って否定する。
「違うよ。仮装じゃなくて…」
「あーうん。わかったお菓子あげるから。そういや棚にあったような気もするし」
「だから違うってば」
「はあ?」
じゃあ何さ。
首を捻って考えていると、弟がポケットから何かを差し出した。
見てみると……
「こ、これ…昔大好きだったお菓子…」
「そ。これ、姉ちゃんにあげるよ」
「え、ほんと!?」
弟の手には、私が昔ハマっていたお菓子が。
もちろん今は買ってないけど、こう目の前に出されると味が蘇って来るようで、もう一度食べたくなる。
反射的に手を伸ばしかけたその時、
弟は真面目な顔で、懇願するように言った。
「だから…!
お菓子あげるから悪戯させて!!!」
「はぁあ??」
こいつ何言ってんの?
お菓子あげるから悪戯させて、って……何か予想外すぎて反応に困るな……
とか考えてると、いきなり弟が手首を押さえつけてきた。
「…え、うわっ!!」
そしてそのままベッドに倒され、体を密着させられる。
すると弟が息がかかるほど顔を近付けてきて
「ね…?いいよね、ねーちゃん」
「は!?よ、よくない!放して!」
「だいじょーぶ。意地悪なことはしないから…」
「やっ…、いやぁああっ!!!」
「ぅぐっ!!」
耳元で囁かれ、背筋にぞわっと悪寒が走った。
そしてそのままの勢いで叫びながら弟の脇腹を蹴りあげてしまった。
「え、やった…?」
弟が怯んだ隙にベッドから立ち、ひとまず弟との距離を置く。
弟は…大丈夫かな…
ベッドにうつ伏せの状態でノックアウトしている弟が少し心配だ。
いや、いくら変態でも…一応弟だし、ね?
すると、弟がむくりと起き上がってこっちを振り向く。
そしてにたりと笑った。
「ふ、はは…っ、ねぇ、俺がこの程度で姉ちゃんを逃がすとでも…?」
「ひぃい!!?こ、こっち来んな!!」
ふらふらとこちらに近寄る弟は、…悪いけどラリった人にしか見えない。
それだけに、何をするかわからない雰囲気を漂わせていて……
ど、どうするよ私!!
い、いや、違うな……
……ついに弟と、これをやる日が来たようだ……。
(*◎д◎))))⊃⊃⊃
〜Let's Battle!!!!〜
BGM:『youはshock!!』(北斗の拳より)
※お手数ですが脳内再生でお楽しみください★
【弟】
[ふ…ふふっ…姉ちゃん、悪戯さーせーてー?]
[敵【弟】HP 50/50]
【紫乃】
[ひッ…!さ、させるか馬鹿!変態!]
[私【紫乃】HP 50/50]
[【紫乃】先攻]
・たたかう←
・どうぐ
・にげる
【弟】
「姉ちゃん」
【紫乃】
「…何?」
【弟】
「……俺から逃げないで」
【紫乃】
「何でそんな、」
【弟】
「お願い、だから」
【紫乃】
「…………」