読み切りSS

□無理矢理
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#ヒムジェへの今夜のお題は『無理矢理』です。 http://shindanmaker.com/447736
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寝る前に水を一杯だけ飲もうと廊下に出ると、リビングのある方から明かりが差し込んできていて、リビングを覗いてみるとヒムチャンがひとりソファに座っていた。
ヒムチャンはこちらに気が付くと、やばいという顔になった。

「…寝る前にそんなもの食べると」
「あーーーーーっ、わかってるよ。俺が悪かった。ヨンジェ」
「別に、俺に謝らなくていいですから。でもその食生活辞めたほうがいいと思いますよ」
ヨンジェは冷蔵庫から水のペットボトルを取り出して、ヒムチャンの隣に腰掛けた。
ソファのサイドテーブルには、差し入れでもらったクッキーの箱と、個別包装の食べた残骸がいくつか散らばっていた。

「いや、俺もわかっているんだよ。でも、無性に夜に甘いものが食べたくなるときがあるんだよなぁ」
「寝る4時間前にお腹を空っぽにしておくと太らないらしいですよ」
「…それは俺に朝まで起きていろと」
「そうですね」
「ふん。じゃあ朝まで付き合ってよ」
と笑っている。いつもの調子で自分に甘いヒムチャンに少々呆れてため息をつく。

そんなヨンジェの様子をヒムチャンは知ってか知らずか、
「ヨンジェはさ、どうやったらそんなに自分に厳しくできるわけ?」
「俺は、リーダーに必要とされる人間であるように努力しているだけです」
「むむ。年下のお前がそんなにしっかりしていると、俺ばかりダメ人間にみえるのは納得いかないな」
よし、共犯にしてやる、とにやりと笑った。
ヨンジェは何となく嫌な気配を察知したが、ヒムチャンは少し大きめのクッキーの端を軽くくわえてヨンジェの方を見た。
「…何ですかそれは」
「お前にも一口食わせると言っている」
「いらないです」
ヨンジェが冷やかな目でヒムチャンを見ていたが、ヒムチャンがぐいと顔を近づけてきて、
「あんまり長くこのままでいると他の誰かが来るぞ」
と言うので、やれやれ、と仕方なくヨンジェがクッキーの端をかじろうと顔を近づけ口を開けると、ヒムチャンの手がヨンジェの頭を後ろから引き寄せてきた。
ヨンジェははじめ抵抗していたが、ヒムチャンの手がしばらく解放してくれなかったので、結局舌で無理矢理クッキーの欠片をねじ込まれた。

クッキーの甘い味が口の中に広がる。
「ふふふ。これで共犯だ」
「…最低ですね」
「駄目だけど、嫌じゃない。だろ?」
目的を達成したヒムチャンは満足げだった。


ヒムチャンはいつも、自信家で自分勝手で強引で。
どうしてこの人に惹かれるんだろう、と時折思う。
でも、心をかき乱される唯一の存在であることは間違いなかった。


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おしまい
 

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