読み切りSS

□おかえりなさい
1ページ/1ページ

-------------------------------------
#グクジェは最後に、照れくさそうに「おかえりなさい」と言って終わるお話を想像してください。 http://shindanmaker.com/283542
-------------------------------------

ヨングクは自分の部屋で荷造りに追われていた。テレビ番組の企画で、ジャングルに行くことになったからだ。
ついさっきまで、ヒムチャンとデヒョンが部屋にいて、何をもっていくんだとか、着ていく服はあるのかとか、高いものは持っていくなとか、1人で大丈夫なのか、とがやがやと言いたいことを言っていった。
嵐が去ったあとの静けさで少しほっとしていた。
今回は他のメンバーと一緒でないが、何とかなるだろうと自分では思っていて。まあ、あいつらなりに心配してくれているのだろうけども。この賑やかさとしばし離れたら、また恋しくなるだろうか。

コンコン、と扉をノックする音が聞こえて扉の方を向くと、ヨンジェが立っていた。

「これ、非常用に持っていってください」
と淡々と言って、ビニール袋を差し出してきた。
受け取って中身を見ると、500mlのペットボトルが1本、胃腸薬と絆創膏。
「ありがとう。助かるよ」
ヨンジェの気遣いに感謝して自然と笑顔になる。

「さっきまで、ヒムチャンとデヒョンがいたんだけど、散々俺1人でバラエティ番組に出るのが心配だと言われたよ」
と苦笑しながら言うと、ヨンジェは表情を変えずに、
「僕は、リーダーが1人でテレビに出ることに関しては心配しませんよ」
ヨンジェの意図がわからなくて、
「…どうしてそう思った?」
と尋ねると、ヨンジェは俯き気味に、
「…ヨングクヒョンは、グループでいるときより他のメンバーがいないときの方がのびのびしているように見えますから。
ヨングクヒョンには、リーダーとしての責任感が枷になっているんじゃないかと思うと、申し訳ないんですよ。…ちょっと寂しいですけどね」

ヨンジェの言葉にヨングクは少し驚いた。ヨンジェはもともと賢いから、周りの人間のことに気がつくし、先回りして考えるからこそ、いろいろ不安なことにも気がつくのだろう。

「ヨンジェ」
ヨングクはヨンジェに優しく語りかけた。ヨンジェは部屋を出ようとしていたが立ち止まってヨングクを見た。
「俺は、リーダーとしての責任はとるつもりだ。枷だと思ったことはないよ。そこは腹を括っているから、お前が気にしなくていい」
「…本当ですか」
「信頼されてないのは、リーダーとしてまだまだということかな」
「すみません、そういうわけではないんですが」
ヨングクはふっと微笑んで、
「ヨンジェが、俺が帰る場所を作っていてくれたら、俺はリーダーとしてもっと頑張れるよ」

ヨンジェは黙ってヨングクを見つめていたが、そのまま何も言わず部屋を出ていってしまった。

再び静かになった部屋で、ヨングクはふっとため息をついた。
ヨンジェにちゃんと届いたかどうかわからないけれど、さっき言った言葉に嘘はないよ。
今はリーダーとしてできることをやりたいと思っているよ。
親しい間柄の間では言葉はいらない、というのが自分の信条だったが、言葉にしないと伝わらないこともあるのだ、という狭間で葛藤する日々ーーーーー。


◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎


2週間後、ヨングクは無事に収録を終えて、帰国して宿舎へ戻った。中に入ろうとしたとき、少しだけ緊張した。
扉を開けると、とたとたと足音が聞こえて、まず出迎えてくれたのは、ヨンジェだった。ヨンジェは照れくさそうに立っていて、
「…おかえりなさい」
「ただいま」


--------------------------------------

おしまい
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ