お話W

□U
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『アイネクライネ』より

ソファーで本を読んでいればボスリ、と隣に腰掛けた蓮示君に、さっきまで人のベッドでゴロゴロとしていた彼がソファーへと移動してきたことに本から顔を上げてどうしたんだろう?と蓮示君を見やる。
「珈琲?」
「……いや」
何を言うでもなくただただ私の隣に腰掛ける蓮示君にそう聞けば小さく声を漏らした蓮示君がチラリ、と私を横目に見やったことにキョトリ、と目を瞬かせてしまった。
「……気にするな」
読んでろ、と言って正面へと視線を向けてしまった蓮示君に、なんだろう?と首を傾げてみたけれど聞いても何も言ってくれないのはいつものことなのでまぁ良いか。と読みかけていた本へと視線を戻す。
何処まで読んだかな、と文字の羅列を目で追っていればモゾリ、と隣で蓮示君が動いた気配がして不意に膝の上へと蓮示君が倒れてきた。
ボス、と膝の上へと落ちた彼の頭になんだなんだ?とそんな蓮示君を見下ろせばゴロリ、と向きを変えて私から顔を背けてしまった彼に、あぁ、となんとなく蓮示君がしたかったことを理解する。
「膝枕、してほしかったの」
「………」
そう聞いても返事のない蓮示君に言えばいいのに、とフフ、と笑えばジロリ、と睨まれてしまった。
またフィ、と逸らされた視線に、でも膝の上から退くことはなくて、そんな蓮示君の頭をゆるゆると撫でればそのまま目を閉じてしまった蓮示君に手元の本へと視線を落とす。
本を片手に膝の上の蓮示君の頭を撫でていればいつの間にか聞こえてきた寝息にまた、膝の上の彼へと視線を落とす。
狭いだろうにソファーの上にその長身を丸めて横になる蓮示君に、静かな時間が流れる部屋に、こういうのも良いな、なんて眠る蓮示君を見て一人ふふ、と笑みを零した。


ひざまくら
   確かに恋だった』様より


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