お話W

□U
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グリグリと肩口に押し付けられる頭に、顔に触れる髪の毛がすくぐったいんだよなぁ、と思いつつ人のことを抱き枕よろしく抱え込むウタさんの頭をゆるゆると撫でる。
お風呂上りで少し火照る体に、夏場は暑いからあまりくっつかないでほしいな、とは目の前でどこか楽しげに人の体を抱きこむ恋人には流石に言えず、彼が飽きるまではやりたいようにさせてあげよう、とポンポンとウタさんの頭を撫でていれば不意に首筋にピリ、とした痛みが走った。
「っ、ぃっ……?!」
「あぁ、ごめんごめん。つい」
美味しそうで、と首筋に走った痛みにそう声を漏らせばそう言ってソコに舌を這わせたウタさんに小さく肩を震わせればクスクスと楽しげな声が耳に届いた。
「ねぇ……ウタさん?コレ血ぃ出てるんじゃないですか……?」
「うん、少しね。でも大丈夫、コレぐらいならすぐに治るから」
痛いんですけど…、と未だピリピリとする首にそう抗議の声を漏らせばそうあっけらかんとのたまったウタさんがまた首筋に歯を立てたことに慌ててそんな彼を引き剥がした。
「すぐに治るけど痕は残るからダメなのっ!!」
「んー……じゃぁ見えないところに」
そう言ってグイ、と捲くられた服にそういう意味じゃないっ!!と慌てて上げられた服を引き下ろす。
「噛まれると痛いのっ!!分かる?!」
「甘噛みだよ?大丈夫、本気で噛んだりしないから」
そう言ってまたグイ、と引かれた腕にそのままウタさんに抱き込まれてしまい、ガッチリと今度は体をホールドするウタさんに離れることさえ出来なくなってしまった。
「甘噛みでも喰種の歯は痛いんですって!やーめーれーっ!」
「僕のささやかな楽しみなんだから、少し我慢してほしいな」
これでも抑えてるんだよ、と言ってまた肩口に顔を寄せたウタさんにグッと言葉を詰まらせてしまう。
美味しそう、食べたい、とはよく言うウタさんだけれど、決して私を襲うなんてことはなくて……
イトリさんや四方さんに言わせれば、人間との共同生活は喰種にとっては生殺しのようなものらしく、ソレを『あの』ウタがしているのだから褒めてやれ、と言われたことを思い出し諦めたようにそんなウタさんの頭をゆるりと撫でた。
「あ…あと、少しだけですからね……」
「ふふ、うん。ありがと」
そう言ってゆるゆると頭を撫でれば楽しげに笑ったウタさんがまた首筋に歯を当てたことにグッと息を呑み込んだ。
軽く舐められた首元に、小さく肩を震わせればツキン、と痛んだ首筋に、血が出ているんであろうそこに舌を這わせるウタさんは至極楽しげで、そんな彼を見てまぁ喰種なのだから仕方ないか…と彼のその行為は諦めることにしてそんなウタさんの頭を撫でやった。


甘噛み
   確かに恋だった』様より


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