お話X

□恋時雨0
2ページ/3ページ




冷静に考えればなんの能力もないたかだか三等兵の海兵が、無事子供を連れて炎の海から出られるわけがなかった。
退路を塞ぐ炎の壁に、泣きじゃくる子供をその腕に抱えさて、どうしようか…と途方に暮れる。
「大丈夫……大丈夫だから……」
後ろも火、前も火で逃げ場のない状況に、それでもこの子だけは…と子供を抱く腕の力を強めまるで自分に言い聞かせるようそう声を零しどうにか逃げ道を探していればガララッ!!と頭上の天井が崩れ落ちてきた。
「―――っ!!!」
「退いてろぃっ!!」
逃げ場のないソコに、上から降り注ぐ瓦礫を呆然と眺めていれば聞こえたその声。
それに子供を腕の中に抱え込んで身を低くすればブワリ、と頬を撫でた風と共に頭上の瓦礫が一掃された。
「怪我はねぇかよぃ、新兵」
「え……?あ、は、はいっ」
スタン、と目の前に降り立った同い年ぐらいの男の子に、その身に纏う青い炎を呆けた様に見ていればそうかけられた声。
それに慌てて立ち上がればそんな私を一瞥した彼が炎の渦へと向き直った。
「たいした力もねぇくせに、炎に飛び込んで行くなんて……無駄死にしてぇのかぃ?」
「で、でも海兵として一般市民を守るのは当然の義務で……!!」
そう言ってひどく呆れた様に声を漏らした彼に、そう声を上げればそんな私を横目に見やった彼はその眉間に皺を寄せると小さく溜息を吐きだした。
「その『海軍』が此処に火を放ったんだろぃ。ただが懸賞金1億程度の海賊を捕える為によぃ」
「っ………!!!」
そう言って小さく鼻息を漏らした彼に、言葉を詰まらせる
彼の言っていることはもっともだ
市民を守るための海軍が、何故市民を苦しめるような事をするんだろう……
私が憧れていた『正義』とはかけ離れた現実に言葉を返せないでいればまぁ良い、とそんな私から視線を外した彼がまたその体に青い炎を纏わせた。
「そのチビ助けるついでにお前さんも助けてやるよぃ」
そう言ってついてこい、とその体を変化させた男の子に
人間が鳥になったことに呆然としていれば置いてくよぃ、と声をかけられ慌ててそんな彼の後を追いかけた。

次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ