お話X

□恋時雨0
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―プロローグ―

ゴウゴウと燃え盛る炎に、まだ子供がいるんです!!と泣き叫ぶお母さんを見て、消火活動よりも海賊の身柄を確保するのに忙しそうな上官たちを見やる。
こんなやり方はおかしい、と言った私の意見なんかは通るはずもなく、海賊を捕まえる為ならば多少の犠牲は仕方がない、とその建物に放たれた火に、所詮は三等兵なのだと自分の力の無さをひどく怨んだ。
徐々に崩れ落ちていく建物に、その中から逃げ出す海賊達を見て泣き崩れる母親へと視線を落す。
私にもっと力があればこんなやり方なんてさせなかったのに……
あぁ、そうじゃない……『今』自分に何が出来るかを考えなければ……
力がなくたって、きっとできることはあるはずだ
そう思ったら考えるよりも先に体が動いていた。
「おいっ!!新兵戻ってこい!!」
そう後ろから聞こえた上官の声にさえ振り返らずに私は燃え盛る炎の渦に飛び込んでいた。

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