お話U

□U
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ビーデルちゃんから恋愛小説なる物を借りた。
興味ないって言ったらありえないものでも見るような目で見られたので仕方なく貸してもらったのだけど………他人の恋愛話を読んで何が楽しいんだろう?
良く分からないなぁ、と思いつつソレでも折角借りたんだから最後まで読んでしまおう、と読み進めていけばとても興味を引く内容が書かれていて、コレは早速我が師匠で試さなければ、と思わずニンマリと笑みが零れた。


「シ・ショ・ウ♪」
「気色が悪い」
コンニチハー!と神殿にやってきた私はいつもの如く瞑想をするピッコロさんを見つけるとそんなお師匠様へと声をかける。
けれどもそんな私を一瞥したピッコロさんはソレはもう嫌そうに眉を顰めるとフン、と私から顔を背けてしまった。
気色悪いとか愛弟子にたいして失礼だな!!
「相変わらずお厳しいですね」
「貴様が『そういう顔』をする時は碌なことがない」
そう言ってピッコロさんの顔を覗きこめば今度は背中を向けられてしまった。
否定しないけど少しは弟子の事信用してくれても良いと思います!!
「ねぇシショー、手ぇ貸してください」
「…………理由を言え」
そう言ってはい!と手を出してくれるようコッチの手を出したのに向けられたのは物凄く不審そうな視線で………、ホントこの人私の事信用してないな、ちょっと傷つくぞ!!
「ちょっと御手を拝借したいだけだってば!」
「理由を言えと言っとるんだ!」
「なんだよそんなに愛弟子の事が信用できないのか?!」
「出来るわけないだろう!!寝ている人の耳元で口笛を吹いたり、ターバンにドラゴンの卵を詰めたり、水に塩を混ぜたり、上げたらキリはないが貴様は隙あらば人の事をおちょくりおって……!!!」
否定できませんゴメンなさいっ!!!
そう言って声を荒げたピッコロさんはその時の事を思い出してむかっ腹が立ったのか瞑想の型を解くとグワシ、と人の頭を鷲掴みにしてきた。
あ、コレはヤバい逃げなきゃ……!!
思わず上がった悲鳴と謝罪の言葉にそれでもただ手が貸してほしかっただけなんです―っ!!と声を上げればそんな私を見下ろしたピッコロさんが一つ息をついて仕方なしに、と言った感じに右手を差し出してくれた。
ナメック星人特有の4本指に、男(だと私は思ってる!!)にしては長くて綺麗な指を見て、差し出された右手を両手で持ってソッと自分へと引き寄せる。
怪訝そうに向けられる視線に、なんだかんだ言いつつも私の我儘聞いてくれるんだよなぁ、と思いながらそんなピッコロさんの手の甲にキスを落とせば
バッと振り払われた手に物凄い勢いでその手の甲をマントで拭かれた。
ホント傷つくからね!!!?
「オイッ!今のはなんだ?!!何かの呪いか?!」
「アンタホント弟子の事なんだと思ってんですか……」
そう言ってゴシゴシとソレはもう擦れるんじゃないかってぐらい手の甲をマントに押し付けるピッコロさんにもう良いよ!!と声を上げて神殿を後にする。
あぁ、やっぱりらしくない事はするもんじゃないな。しかもあの人絶対意味なんて分かってないし逆に何かの呪いだと思われた……!!
これなら普通に『いつもありがとうございます』って口で伝えた方が良かったなぁ、と激しく後悔した瞬間だった


『敬愛』をキスに込めて


「何が、したかったんだ?アイツは……」
何処か怒った様子で神殿を飛び立って行った弟子に、案の定赤くなった手の甲へと視線を落としたピッコロは彼女か口付けたそこを見やると随分と昔の元神の古い記憶を思い起こし、ボッと顔を真っ赤に染め上げた。
「っ、アイツは、変な事ばかり覚えおって……!!」


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