お話U

□ピッコロT
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いつものようにピッコロさんに神殿に呼ばれて今日もまた師匠のスパルタが始まるのかぁ、と嫌々神殿へと向かう。
「どうもこんにちはー!」
「あ、いらっしゃい!」
寒かったでしょ?さ、どうぞ!と最近この地球の神になったデンデ君に出迎えられ応接間へと行けばソコには何故か神殿には似つかわしくない物が鎮座していた。
「え?これ……コタツ?」
「倉庫の片付けをしていたら出てきたんです」
何で?と首を傾げればどこか楽しげに笑ったデンデ君がそう答えコタツの電源を入れてくれた。
カチリ、と音がして起動し始めたコタツに、天界って電気通ってんの?とかまぁそんな細かい事を突っ込んでいたらキリが無いので早速コタツへと潜り込む。
「あーったかーい!」
幸せー、と顔を綻ばせればふふ、と笑ったデンデ君が今飲み物持ってきますね、と応接間を後にした。
そう言うのは本来神様がやることじゃないんだよ、と言いたかったが一度コタツに入ってしまうと出たくなくなるのが人の性で、ありがとー!と返した私は再びコタツへと潜り込んだ。
ジンワリと広がる熱に幸せだぁ、と声を漏らせばオイ、と言う声と共に頭を蹴られた。
ソレに上を仰げば凶悪面をより一層凶悪に歪めた我が師匠がソコには立っていた。
「どーもー、お邪魔してますー」
「貴様、何しに来たんだ。ゴロゴロしてる暇があるなら修行をするぞ」
そう言ってさっさと出ろ、と再び蹴られた頭に批難の声を漏らしさらにコタツへと潜り込む。
「こんな所にコタツがあるから悪いんですよ」
出たくない、とゴネればますますその眉間に皺を寄せたピッコロさんが乱暴にコタツのコンセントを引き抜いてしまった。
「寒い寒いと煩いヤツだ、この程度で寒いとは鍛え方が足りんのだ!!」
さっさと修行に行くぞ!!と例のごとく襟首を掴み上げたピッコロさんに無理矢理コタツから引っ張り出されてしまった。
「さっむ……!!」
途端に襲い来る寒さに身を丸まらせれば私を脇に抱えたピッコロさんはそのまま神殿を飛び立ってしまった。


「ピッコロさん……チョイスがおかしい……」
ヒュォー、と風の吹き抜ける大地に、湖が凍るソコを見やり投げ出された体をギュッと抱きしめれば、私の言葉なんて聞く気もないんだろうピッコロさんはさっさと瞑想に入ってしまった。
「寒いー、死ぬー。この鬼畜師匠めー」
「今すぐに黙らんと二度と口を利けなくするぞ」
ガタガタと体を震わせながら恨めしげにピッコロさんに視線を向ければ尋常じゃない目つきで睨まれた。
ソレに慌てて口を閉じ、カタカタと震えながら寒い寒い、と小さく声を漏らし瞑想の型を組めば呆れたような溜息が降ってくる。
ピッコロさんの動く気配に、どうしたんだろう、と目を開ければバサリ、と視界いっぱいに白が広がった。
「ピッ……?!!」
「貴様は本当に寒さに弱いな」
そう心底呆れたように言って体に腕を回したピッコロさんに、体を包むマントを見てグッと言葉を詰まらせる。
そのまま私を膝に抱え普通に瞑想に戻ってしまったピッコロさんに、背中に広がる温もりと体に回された腕を見てギュッと目を閉じた。
バクバクと煩い心臓に、ソレを落ち着かせようと深呼吸をしたところで頭上からオイ、と声が降ってくる。
「集中せんか」
「だっ………っ、集中してますよ!!」
誰のせいだと!!と声をあげたかったけれど、どうせこの人はひどく不思議そうな顔をしてお前だろ?とのたまうに決まっている。
分かり切っているやり取りに、反論する気も失せて再び心を落ち着かせる。
だいたい不用意にこういう事はしないでほしい。
コッチは意識しすぎて瞑想どこじゃないっての……!!
これだから雌雄同体は、と小さく心の中で悪態をつけばグッとお腹に回されていた腕が胃を圧迫した。
「ギッ、ギブギブギブギブ……!!」
何すんだよ!!と緩んだ腕に声を上げピッコロさんを仰ぎ見れば舌打ち付きで睨み返された。
「人がわざわざ暖をとらせてやっているんだ。瞑想に集中しろ、さもなくば次はこの氷山の海に叩き落とすぞ」
「ホンットすいませんでしたっ!!!」
ドスの利いた声で凍てつく湖を顎で指したピッコロさんに、有言実行な師匠から顔を正面へと戻した私はこれまでにないほどに瞑想に集中できた。


今はこのままで、いつか先に進めたら


「帰ったらポポさんに温かいココア作ってもらお―……」
 「その前にその鼻水をなんとかしろ」
「強靭なナメック星人と一緒にしないでくださいー……ズズッ」
 「貴様の鍛え方が足りんのだ」
「そんな軟弱を育てるのがピコさんの役目でしょー?」
 「ほぅ……言ったな?」
「あ、嘘です優しく指導してください……!!」
 「くだらん事を言っとらんでさっさと帰るぞ」
「師匠のスパルタのおかげでもう一ミリたりとも動けないんですけど……おんぶプリーズ」
 「……………世話の焼けるガキめっ!!」
「それおんぶやない俵担ぎや……」
 「贅沢言うな。運んでもらえるだけ有り難いと思え」
「ふふ、ありがと、ピコさん」
 「フン」


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