お話U

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ボロボロに破壊された街に、やっと第一形態まで羽化をしたセルは街の復興に勤しむ西の都の住人をその太く長い尻尾で捉えるとグルリと辺りを見回した。
「やはりココにもいないか……」
「ゥ、ぐ……ば、化け物……」
辺りに点々と散らばる衣服に、そう言葉を発した男性の体をその鋭い先端で突き刺したセルは生体エネルギーを吸収すると干からびて消えた男性を一瞥し小さく目を細めた。
「どこにいる、17号18号……。貴様等は私が完全体となるための礎なんだ」
早く出て来い、と苛立ちを現す様に尻尾を瓦礫に叩きつけたセルはガラリ、と崩れた建物から上がった悲鳴に建物の影に隠れている人間へと視線を向けた。
「ど、どうなってんだよ……、何だよあの化け物っ……!!折角人造人間がいなくなったってのに……!!」
「人造人間が……居なくなった……?」
そう声を震わせその場を走り出した男性に一瞬で詰め寄ったセルはその異形な形の脚で男性の体を踏みつけるとふむ、と再び辺りを見回した。
「どうりでどこを探しても17号も18号も見つからんわけだ……」
さて、どうする、と苛立たしげに眉を顰めたセルは助けを乞う男性の体に尻尾を突き刺すとカラン、と聞こえた音に再び視線を巡らせた。
石か何かに躓いたんだろう地面に倒れ込む女性らしき姿に、その側に落ちている杖を見やったセルはせせら笑うように鼻を鳴らすとその女性へと歩み寄った。
「ぁ、うっ……」
「こんな成りになってまで生きて何が楽しいというのだ人間よ。私の養分になった方が何倍もマシだろうに」
ボロボロに擦り切れた服に、泥だらけのその顔を見やったセルは目が見えていないのだろうその女性の頭を足で持ち上げると苦しそうにもがくその女性へと尻尾を突き刺した。
ドク、ドク、と脈打つ尻尾に布きれだけになった女性だったモノを放り投げたセルはジンジャータウンを見回すとソコに人の気配が無い事を確認して再び歩きだした。
「フン、大した養分にもならなかったか」
そう言って風で飛ばされていく布きれと化した服を一瞥したセルはもっと大きな街へ行くためにその場を飛び立った。



災悪の始動


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