お話U

□エースT
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報告書のまとめだ何だとやっていたら気が付けばもう7時を回っていた。
時計を見やりまだ残っている仕事に家でやれば良いか、と必要な資料をカバンに詰めて家路へとつく。
マンションの階段を上って部屋のカギを取りだせばカギが空回りをした。
それに小さく首を傾げて扉を開ければ玄関にはよく見知った人物の靴が転がっていた。
「おつかれー」
遅かったな、と顔を覗かせたエースはモシャモシャと何かを咀嚼しながら私を出迎えてくれた。
そんなエースにただいま、と返して家へと上がればテーブルの上にギッシリと食べ物が詰まったコンビニ袋が置かれてあった。
「腹減っただろー、買ってきといたぜ!」
そう言ってきっと待ち切れなかったんだろうサンドイッチを食べるエースにカバンを部屋の隅へと置いてエースの正面へと腰掛ける。
ン、と差し出されたソレは私の大好きなオムライスだった。
「わざわざありがとう」
オムライスを受け取りエースを見やればニシシ、と笑ったエースが再びガサゴソとコンビニ袋を漁った。
「お茶とアクエリアスと紅茶、どれが良い?」
「じゃぁお茶で」
そう言ってテーブルに広げられた飲み物と沢山の食べ物
そう言った私にお茶を手に取ったエースがソレをほら、と差し出した。
お茶を受け取り軽く2,3日分はあるであろうその食料を見て3つ目のサンドイッチに手を伸ばすエースを見やる。
きっと仕事が終わって真っ直ぐ私の家に来たんだろうエースの服は現場の作業着のままで顔も少し汚れていた。
そんなエースの顔を服の袖で拭いてあげれば汚れるぞ、と呆れたように言われてしまう。
もうすでに君がその格好のまま家に上がった時点でアウトなんだけどね。
ソレは口には出さずにオムライスを一口頬張る。
セブン●レブンのオムライスは私の好物だ。
でもエースの職場から私の家までのルートの間でセブンイレブ●は無かったはずだ。
きっとわざわざ遠回りして買ってきてくれたんだろうな。
そんなエースの気遣いが嬉しくてふふ、と笑えばなんだよ?と不思議そうな視線を向けられてしまった。
それに何でもない、と返してありがとう、と再び笑えば少し照れくさそうに鼻をかいたエースがオウ、と笑みを返してくれた。




「どぉ?仕事には慣れた?」
「まぁまぁな。自分が作る物が出来上がってくの見んのは楽しいぜ」
あっという間にテーブルの上のご飯を平らげたエースに、高校のときと変わらない、もしくはそれ以上になった食欲に感心しながらそう言えばベッドサイドに凭れかかったエースはそう言うと楽しそうに笑みを浮かべた。
高校を卒業して暫く風太郎をしていたエースも最近は良い職場を見つけたのか生き生きとしている。
「エースも頑張ってるし、私も頑張らなきゃなぁ」
そんなエースを見てそう言えば何故かグシャリと頭を撫でまわされた。
「お前は少し頑張りすぎだ!ちゃんと寝てんのか?」
少し乱暴なその手に抗議の声を上げればそう言ったエースにジトリと睨まれてしまった。
それに休んでるよ、と返せば目の下にクマできてっぞ、と笑われる。
ファンデーションで上手く隠したつもりだったんだけどどうやらエースにはバレてしまうらしい。
ハハ、と苦笑した私にどこか呆れたように溜息を吐きだしたエースは立ち上がると勝手にクローゼットの中を漁りだした。
「風呂入れといたからもう風呂入って寝ろよ」
たまにはゆっくり休め!と言ったエースは寝巻きと下着を取りだすとソレを私へと放り投げる。
もう随分昔からの付き合いだから今更どうこう言うつもりもないけど……流石に少しは恥じらってほしい。
女物の下着を当たり前のように手に取らないでほしい。
何か言葉を返したかったけど心配そうなエースを見て分かったよ、と苦笑を漏らせばどこか満足そうに頷いたエースに頭を撫でられた。




お風呂からあがってリビングへと戻ればいつの間にか部屋着に着替えていたエースがホラホラ、と私をベッドへと押し込んだ。
「そんなに心配しなくてもちゃんと寝るって」
「いーや!お前は目ぇ離すとすぐ仕事の残りやろうとすんだ!」
俺は騙されねぇぞ、と鼻息をついたエースに言葉に詰まればどこか呆れたように笑ったエースにゆるりと頭を撫でられた。
「頑張ってるお前見るのは嫌じゃねぇけど、頑張りすぎてるお前見るのは嫌なんだよ。
仕事頑張って体壊しても自業自得だって笑われるだけだぜ?」
だからゆっくり休め、と優しく頭を撫でるエースに小さく頷いて布団に潜り込む。
首まですっぽりと布団に包まって目を閉じれば唇に柔らかい感触が当たった。
それに驚いて目を開ければバチリとエースと目が合った。
「っ、明日!休みだろ?だったら気分転換にどっか行くぞ!」
そう言って顔を背けたエースにボフリと毛布を顔まで押し上げられた。
耳まで赤くしてそう言ったエースにふふ、と笑って頷けばグシャリと頭を撫でたエースは風呂!と言うと逃げるようにリビングを出ていった。



頑張る君にエールを


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